BOOK2
□三つの感応<感じるままに 応えて 欲しい>
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【侵蝕胎動】
始まりは、お前に負けたこと。
最初見た時はひ弱なやつだと思っていた。
それが驚くほどの速さで成長した。
勝てなかった。
いっそ殺せと思うほどに悔しかった。
が…
「アルベル」
呼ぶ声を愛しいと、どうして感じるのか。
「フェイ…ト…」
名を呼ぶことに躊躇いがないわけではない。
だが、ただ名を呼ぶだけなのに如何してお前はそんなに嬉しそうに笑う?
恐る恐る手を伸ばせば暖かい掌が俺の手を握る。
恥ずかしげに絡む指先が僅かに震えて膝の上の温もりが浮いた。
背中に柔らかい布団の感触。
真っ赤な顔で、しっかりと閉じられた瞼を縁取るのは髪と同じ空色の睫。