BOOK1
□傘の日
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今日は朝から生憎の雨模様。
傘は持ってきていたけれど、途中で遭ったシズちゃんの所為でバラバラになった。
「クソ…ツイてない…」
今日に限ってあの子の帰り道とは逆方向。
まあ、もし出逢っても傘に入れてくれたりとかはまずないと思うけれど。
俺は、はぁ…と息を吐いた。
これが冬なら白い息だ。
俺は心の中でシズちゃんへと呪いの言葉を吐き続けた。
と、不意にそばに人の気配が現れた。
「あれ?臨也さん?」
この可愛い声は。
振り返ると目の前に帝人君が立っていた。
「あ、帝人君だ」
「はい」
「丁度良かった、傘に入れて欲しいんだけど」
有無を言わさず肩を抱き寄せ傘の中に割り込む。
帝人君は一瞬考え、ふぅ、と溜め息をついた。
「良いですよ」
それは思いがけず良い答えで。
「え?マジで?」
「はい」
まず絶対断られると思っていただけに驚いた。
「なに?どういう風の吹き回しn」
「嫌ならでてください」
俺の言葉を遮って最高の微笑みでこの子は言った。