ブック1
□Sweet time
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最近出来たばかりのケーキ屋さんがある。
その言葉が、この恋の始まりでした。
俺様の通う高校の通学路の途中にあるその噂のケーキ屋さんは、小さくとも落ち着いた雰囲気の、それこそ男女関係なく入れそうな、お洒落だが他とは少し違った雰囲気の所だった。
先月くらいから口コミで広まり、俺様もちょっとだけ噂を聞き付けて興味を持ったわけなのだが。
ある日学校が終わってから、部活も入っていないため直ぐさまそのケーキ屋さんの所にやってきて。
それから正面に仁王立ちしてじっくりと眺めてみるも、何処からどう見ても至って普通のケーキ屋さん。
うーん、もしかして内装が問題ありなのか?
首を傾げて理由を探せど、外からこうして見るだけではやはりよくわからず。
とまぁ、何故俺様がこんな不審な行動をとっているのかといえば、その噂が問題だったりする。
元々同級生であり弟のような真田の旦那の影響もあり、甘いものが大好物な俺様としては、新しいケーキ屋さんというだけで十分興味は引かれた。
さらに自分で言うのも何だが、けっこう舌が肥えてる、所謂グルメであるために、今までなかなか自分好みの味付けが見付からず(寧ろ自分で作ったほうが美味しい気がするんだよね)、もしかすると次こそは好みのものかも、とちょっと期待もしていたわけである。
そこに、ちょうど出回っていた噂だ。
どうも皆が言うには、そのケーキはものすんごく美味しいらしい。
それはもう、こんなもの一生に一度お目にかかれるかどうか、ってくらいめちゃくちゃ美味しいらしいのだ。
すれば当然、俺様の期待はますます高まるわけで。
これは早速食しに行かねば!と決意を固めた時である。
けれどもどうやら、噂には続きがあったみたいで。
『美味しい、そりゃもうすっげえ美味い………んだけど、ね…』
よくわからないけれど、そのケーキ屋さんに行った人達皆して、何故か感想の最後に口ごもるのだ。
美味しいとははっきり言うのに、何故かその後が続かない。
ものすんごく美味しいケーキ屋さんには、それと同じく、もしくはそれ以上の秘密があるらしい。
というか、問題点なのかな?
そんなこんなで、その全てを解明するため、まぁ早い話美味しいケーキを食べたいだけなんだけど、こうして噂のケーキ屋さんに来たわけだった。
「とりあえず、入ってみるか!」
中に全ての謎が隠されている!
何だか大袈裟だけど、さあさ猿飛佐助いざ突撃!
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