小説3
□隠し子と組長
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バトンで決まったカプで小話を書こう誰得企画その2「アカギ(19)×原田」
「お前、どこから来た?」
「わからない」
「筋者か?」
「違うと思うけど」
「……カタギには見えへんな」
「フラフラしてるだけさ」
「たとえそうでも、さすがに迷子になる歳やないやろ」
「……いや、案外そうかもしれない」
「なんや、訳のわからんやっちゃな。あれか、記憶喪失かなんかか?」
「それは多分違うけど」
「せやったら、名前は?」
「赤木」
「赤木ぃ?下の名前は?」
「しげる。赤木しげる」
「……………そんなアホみたいなことあるんかいな」
大阪の街の片隅、自分の黒塗りベンツの前で話す原田は、今起きているこの状況が信じられず思わず目をぱちくりさせた。
目の前にいるこの青年は自分のことを、赤木しげると名乗ったのだ。
それだけだったらただの同姓同名として済ませられるが、青年は容姿まで原田が知るあの「赤木しげる」にそっくりだった。
白い髪に青白い肌、そしてなにより人を射抜くような視線。底の知れない瞳の奥。
この青年が順当に歳を取れば、あの「赤木しげる」になるであろうことは間違いなかった。
これは他人の空似、では済まされない。
「お前……本当に赤木か?」
「…あんた、俺のこと知ってるみたいだけど…残念ながら俺はあんたのこと知らないんだ」
「いや、ワイもお前自身のことは初めて見たんやけど……なんやねんこれ、新手のドッペルゲンガーか?」
「そっちこそ、何訳のわからないこと言ってるのさ」
不思議そうに首を傾げる「赤木」は、見れば見るほど赤木しげるそっくりだった。
ただ若さゆえか、目の前の赤木の方がより鋭い雰囲気を醸し出していた。
それでもやはりこいつは赤木しげるに間違いなかった。
「お前本当にどこから来たんや?」
「だから、わからないって言ってるだろ」
「じゃあ、お前は今まで何してたんや?」
「別に……ただ歩いてたらいつの間にかここにいただけさ」
「………」
説明がアバウトすぎて全くわからない。
こいつは本当にドッペルゲンガーなのか、はたまたドラ○もんよろしくタイムスリップでもしてきたのだろうか。
普段ならこんな非科学的な想像などしないのだが、この青年があまりにも赤木しげるに似すぎていて、原田の脳味噌もこいつはあの赤木しげるだと本能的に理解していたため、今ならどんなぶっ飛んだ仮説でも信じられる気がした。
「………んん?」
いや、待てよ。
もっと現実的で科学的な一番納得できる仮説があるじゃないか。
原田はそうかそうだとひとりで頷くと、訝しげにこっちを見ている赤木に真剣な顔をして言った。
「お前……………赤木の隠し子やな」
「…………は?」
「せやせや、そういうことなら納得できるわ。そうか、お前あのおっさんのガキか。せやからそないに似とるんやなぁ。あのおっさんもお前くらいのガキおってもおかしないやろうしなぁ」
「…ちょっと」
「ほんまアホみたいに似とるわー。ったく小綺麗なツラしおってからに。大変やろあんな不良中年が親父やと。お前の母ちゃんもよおあのおっさんと結婚したわ。どんな肝っ玉母ちゃんなんや?」
「あの、」
「でもあんなのでもやっぱり父親やさかい尊敬しとるんか?自分のこと赤木しげるやなんて言って。まぁなんやかんや言っても神域の男やもんなー。尊敬すんのも無理ないわ。名乗りたくもなるやろなぁ」
「………」
「あ、もしかしてお前も麻雀打つんか?」
「まぁ打つけど…父親とか訳わかんn」
「せやったらやっぱり強いんやろな。なんせ父親があの赤木しげるなんや。トーシロのはず無いわ。よっしゃ、ワイが赤木のとこまで送ったる!東京でええんやな?あのおっさんもフラフラしとるからおるかどうかわからんけどな。にしてもお前もかなり放浪癖があるんやなぁ。東京から大阪までフラフラ歩いてきたんか?まぁ何にしても送ったるさかいとりあえずワイと一局打てや」
「送るってアンタだから赤木はおr」
「とりあえずこれに乗れ。まずは組まで連れてくからな。明日送ってったるさかい今夜はワイと打つんやで」
「人の話を聞け」
「あ、せやせや、ひとつ注意しといたる。赤木しげる、なんてむやみやたらにつこたらあかん。あのおっさんもいろいろやっとるんやから、とばっちり食うで。ほら、さっさと乗るんや!」
「………………」
まるで大阪のおばちゃんのように捲し立てた原田は、「赤木の息子」の話など一切聞こうとせず、問答無用でアカギをベンツの後部座席に押し込んだ。
向かうは原田組本部。
運転席に座っている黒服を見ながら、何かこんなこと前にもあった気がするとアカギは溜め息を吐いた。
まったく、ヤクザと関わるとロクなことが無い。
日はもうすでに傾き、暗闇が辺りを包み込む。
赤木しげると原田克美の大阪ベンツ拉致ツアーが、今始まった。
カプ?
お馬鹿な克美ちゃんは好きですか?私は大好きです。