小説3

□変態と据え膳
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バトンで決まったカプで小話を書こう誰得企画その3「銀二×神域」













「………はぁ」

ドア越しにシャワーの音を聞きながら、銀二は溜め息を吐いた。
まるで自分の家であるかのように風呂に入っているのは言うまでもなく赤木だ。
真っ赤な夕陽が燃える頃、突然銀二の部屋を訪れ、何事かと理由を聞けば「風呂を貸せ」などと言われ、断る間もなく赤木は勝手に風呂場へと入っていった。
赤木が前触れも無く銀二の部屋に来るのはそう珍しいことではない。不法侵入もしょっちゅうされる。訪問理由は飯を食うためだったり泊まるためだったり何だり。時々森田で遊んでたりもする。森田もお人好しだからか、銀二がいないときに赤木が来ても追い返していいとは言ってあるのだが、そんなことはせず快く赤木を部屋に入れてやるのだ。その度にまた遊ばれると分かっているのに、だ。
しかし、赤木の常識の無さは既に諦めているが、来てすぐ挨拶もなしに風呂って、一体全体どういうことなのだ。
さすがに今回ばかりは全裸で放り出してやろうかと思ったが、お人好しの森田が止めるものだから、すんでのところでやめた。全く、赤木には海のように寛大な森田の心に全力で感謝してもらいたい。
赤木は人ん家に勝手に上がり込んでまで風呂に入りたかったのだろうか。もしかしたら転んだのかもしれない。それか喧嘩。馬鹿じゃねぇのか。

しっかし長風呂だなぁなんて思いながら、銀二はリビングに戻った。





「銀二ぃー」

風呂場から自分を呼ぶ声がする。
無視しようかと思ったが、隣で森田が「行かないの?」という目をしていたため、渋々ソファーから立ち上がった。

「何だ」

「着替えが無ぇ」

「知るかよ。さっき着てたの着て帰れ」

「無理。背広以外全部洗濯機に放り込んだ」

「てめぇさっきから何かゴウンゴウン音するなぁって思ったら!勝手に洗濯機回してんじゃねぇ!」

「ほら早くしねぇと全裸で歩くぞー」

「死ね!」

銀二は渾身の力を込めて脱衣場のドアの隙間から綺麗なシャツを投げ込んだ。
あれ、今の俺のだっけ森田のだっけなんて思っても時すでに遅く、赤木はそれを着て脱衣場から出てきた。

「お前こんなシャツ一枚で歩かせるとか全裸より変態じゃねぇか」

赤木が着ていたのは明らかにサイズがでかく若干短いワンピースみたいなことになっているシャツだった。
どっからどう見ても森田のシャツだった。

「おい変態銀王様」

「うるさい黙れ」

彼シャツ?いやいや違う。森田は赤木の彼氏でも何でも無い。
適当に放り込んだのがいけなかった。
しかしまぁ、何というか、

「………………」

今の赤木の格好は何とも言えず情欲的だった。
長さが余りいわゆる萌え袖状態になった袖、見えそうで見えないギリギリ感、スラッと伸びた白い脚。
風呂上がりの火照った頬と濡れた髪の毛も合わさり、色気がむやみやたらに垂れ流されていた。

「おい銀二、せめて下着くらいは貸せ……」

更なる欲求を言おうとした赤木の言葉は、銀二の唇によって遮られた。
無遠慮に口内に入ってくる舌を赤木は最初は戸惑いながらもすぐに受け入れた。
ちゅ、くちゅ、と溢れるような水音をたてながら、互いに舌を絡ませあう。
銀二の手が赤木のさらけ出された太ももに伸びたところで、唇は離された。
二人とも少し息が上がっていた。

「何盛ってんだよ」

「てめぇのせいだよ」

「森田いるんだろ?」

「……別にしねぇよ。時と場合くらい弁えてる。何だ、期待したのか?」

「ああ、期待した」

お前がどれくらい馬鹿になってくれるのか、と赤木はにやりと笑った。
銀二は眉間に皺を寄せながら、ふいっと目をそらした。
まるで気持ちを弄ばれているみたいだった。
赤木にしたらさぞ面白いのだろう。銀王と呼ばれる男が自分みたいなチンピラに振り回される様は。
銀二にしたら全く面白くない話だった。

「…………俺は賢いからな、そんな馬鹿やらねぇんだよ」

「でも俺はもう馬鹿になっちまってんぜ?」

そう言って赤木は銀二の右手首を掴むと、自分の足の間に持っていった。
そこには既に反応し勃ち上がり始めた赤木のものがあった。

「なぁ?」

「…………じゃあ、そのまま馬鹿やってろ」

銀二は赤木の手を払うと、くるりと背を向けた。
そのままリビングへと歩き始める。

「おいおい、据え膳食わぬは男の恥だぜー」

「そんな据え膳食ったら腹下しちまう」

「先に盛ったのはそっちのくせに」

「うるせぇ」

リビングのドアが閉まり、廊下には半裸の赤木だけが取り残された。
これどうしようかなーもっぺん風呂入って処理しようかなーなんて自分の股間を見ながら考えていたが、あ、と重要な事を思い出し、叫んだ。

「銀二ー!俺の下着ー!」

そのままリビングに突っ込み、その格好に森田が頬を染めるのと、銀二の膝蹴りが赤木の鳩尾に入るのとは同時の出来事だった。
























色気が足りない。
森銀以外の銀さん絡みのカプを書くと森田が受け臭くなるのは何故。



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