小説3

□頼れるお兄さんと可愛い子ども
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バトンで決まったカプで小話を書こう誰得企画その7「森田×しげる(13)」
※俺はしげるに夢見てる。














赤木さんがうちに押し掛けてくるのはそう珍しいことではないのだが、今回ばかりは事情が違う。

「しげる…?」

「どうも」

赤木さんは赤木さんでも、今日来たのは中学生の赤木さんだった。
珍しい。本当に珍しい。

「どうしたんだ?銀さんなら今いないんだけど……」

「いや、別にあの人に用がある訳じゃないんだ」

「じゃあどうしたんだ?」

「アンタに会いに来た」

「は?」

それ以降、しげるは俯き何も言わなくなってしまったため、とりあえず部屋に迎え入れた。
ソファーに座らせ、何か飲むか?と訊いたら、小さく頷いた。
俺も頷くと飲み物を用意するためキッチンへと向かった。
何かあっただろうかと冷蔵庫を開けてみたが、残念ながら牛乳と缶ビールしかなかった。何となくこれらを出すのは気が引け、仕方が無いのでコーヒーをいれることにした。
しげるはコーヒー飲めるのだろうかと少し悩んだが、ホットミルクを出すよりかはマシな気がした。コーヒーが駄目ならカフェオレにでもすればいい。
二人分のカップにコーヒーを注ぐと、角砂糖の入った瓶とミルクと一緒にトレイに乗せる。
それを持ちキッチンからリビングに戻ると、しげるは特に何かする訳でもなく、ただソファーの上に大人しく座っていた。
テレビくらいつけてもいいのになぁ。

「おまたせ」

呼び掛けるとしげるはちらっとこっちを向き、小さく会釈した。
俺がローテーブルの上にコーヒーを並べている間も、何も言わずにじっとその様子を見つめていた。

「コーヒー大丈夫か?」

「はい」

「そっか、よかった」

にっと笑いかけても、しげるの表情は変わることなく、ぼんやりしているというか眠そうというか上の空というか、そんな感じだった。
よくわからず首を傾げながら、とりあえず俺もしげるの隣に座る。
俺がコーヒーに砂糖とミルクをいれている横で、しげるは当たり前かのようにブラックで飲んでいた。
べ、別に俺が甘党とか子どもっぽいとかそんなんじゃない。しげるがおかしいんだ!
子ども気ない奴!

「………森田さん」

突然名前を呼ばれ、一人悶々としていた俺は一気に現実へと呼び戻された。

「な、何だ?」

「…………」

しげるは続きを言おうか言うまいか悩んでいるようだった。
もしかしたらうちに来たのも何か俺に相談するためなのかもしれない。
今躊躇しているのは、コーヒーに二杯も砂糖を入れる大人に相談してよいものかと考えているからなのかもしれない。
まずい。今のでしげるの中の「頼れるお兄さん」という俺のイメージが崩れてしまったのか。
しげるはやっぱり下を向いて考え込んでいる。もしや幻滅されたのか?呆れられたのか?
いやいやいやいや。
よし!俺は頼れるお兄さんになるぞ!

「しげる、何か相談があるのなら聞くぞ」

「……………」

コーヒーを優雅に飲むふりをしながら問い掛けるも、こちらをチラリと見ただけで、反応は薄かった。
ぐ、既に手遅れか……!
無念、と俺が項垂れた時、しげるがやっと口を開いた。

「……本当に聞いてくれますか?」

「え?」

「相談」

逸らしていた視線をこっちに向け、じっと俺を見つめるしげるの表情は真剣そのものだった。
これはただの相談じゃないなと俺は姿勢を正し頷いた。

「勿論。俺で力になれるのなら」

「…ありがとうございます」

素直に礼を言うしげるもまた珍しい。
そこまでしげるを本気にさせる悩みとは、いったい何なのだろうか。
しげるは小さな声で話し始めた。

「…………うちのオッサンと銀二さんてさ、恋人同士、なんですよね」

オッサンと言うのは多分赤木さんのことなのだろう。
そのオッサンと銀さんが恋人同士、というのは何だか違う気がするが、二人がしていることとかを考えれば、結果的にはそうなのかもしれない。
どちらかというと腐れ縁とかの方があってる気がするけれど。
中学生であるしげるからしたら、目の前でキスされているのに恋人じゃないって言われても理解出来ないだろう。あの人達は適当な大人なのだ。
とりあえず話がややこしくならないよう、俺は肯定しておくことにした。

「…まぁ、そうなのかな」

「キスしてますよね」

「…うん……」

「………」

そこからまたしげるは黙り込んでしまった。
今日のしげるは何だかおかしい。いったいどうしたんだろう。
しばらくしてから、またしげるは口を開いた。

「…あの二人、オッサンの部屋にこもって、してるんだ」

「してるって何を……?」

「……多分……セックス」

「………………」

こっち系の悩みを持ってこられるとは、想定外だった。
そっか…思春期だもんな……。

「……してるのか…あの二人…」

「…うん」

「しげるが家にいるのに、か…」

「…………」

しげるは黙って頷いた。
また何とも可哀想な話だ。
つまりしげるは、あの二人がヤってるのが気になってしょうがないということを俺に相談したかった訳か。
そりゃあ言うのも躊躇うよなぁ、こんな話。
まったく、あのオッサン共は………。
よし、俺からあの二人には時と場合を考えてすることはするようにということを、ちゃんと言い聞かせておこう。
それできっちり解決だ、と俺は思ったのだが、それは間違いだった。
話はまだ続いたのだ。

「してることはしてるんですけど……でも、どうやって……?」

「………え?」

え?
どうやってって、そりゃあ…。

「…あの、アレをアソコに突っ込んでだな……」

子ども相手になに言ってんだ俺。
でもしげるはそうですと頷いた。

「それはわかってるんです。でもだからこそわからないんです」

「わからないって何が……」

「だって、あの人達には突っ込むモノはあっても突っ込む場所がないじゃないか」

「……………え」

突っ込む…場所?

「女にはそこがあるけど男には無い。なのにあの二人は絶対にヤってるんだ。いったいどうやってるのかわからないんだ」

「…え、もしかして相談って…」

「そうです。別に俺が家にいる時にセックスしてようがナニしてようが気にはならない。だけどその方法が気になって仕方ないんです」

「………」

「あの二人はいったい何処を使ってヤってるんですか?もしかしたら二人のどちらかに女のアレがあるんですか?男でもある奴がいるんですか?」

ド真剣に質問してくるしげるには失礼だが、俺は笑ってしまいそうになるのを堪えるのに必死だった。
そっか、こいつは思春期であると同時に中学生の子どもだった。
セックスは異性間でやるものだとしか知らない、普通の子どもなのだ。
そりゃあそうだ。自分はセックスのことを男のアレを女のアレに突っ込むものだとして認識していたのに、突然身近の大人が男同士でセックスしているのを見せられたら、いったい全体どういうことなのか理解できないに決まっている。
学校でも教えてはくれないだろう。当たり前だ。本来尻はそんなことに使うものじゃない。教えるはずがない。
しげるもまさかそんなところを使ってセックスしているとは思わないのだろう。だから今混乱している。
尻を使うということを考えるより男にも女性器があると考える方がよっぽど常識的。そういう年頃。
性に関してこの少年は面白いほど無知らしい。
間違っちゃいない。この歳ならそれが普通だ。
しかし、それがあの赤木しげるだと考えると、話は別だ。
まさかあのオッサン達に直接聞くなんてこと出来るはずもなく、悩んだ末に俺に頼ってくれたのだろう。
可愛い。何て可愛い子どもなんだ。これがギャップ萌えか。

「教えてくださいよ、森田さん…」

俺を見上げるその瞳は、思わず目を背けたくなるほど澄んでいた。
さて、どうやって教えたものかな……。
うーん、と俺はわざとらしく腕を組み考え込んでみる。
俺が男同士のセックスがどういうものかを知ったのは、何歳のときだっただろう。わからない。気が付いたら知っていた。
しげるもきっとこのまま成長していくにつれ、自ずと理解していくだろう。
それでもしげるは今知りたいという。
なら、教えてやってもいいのかな。
何でも相談に乗ると言ったのは俺なのだ。

「……うん、じゃあ、とりあえず、ベッドに行こうか」

俺はソファーから立ち上がると、しげるにも立つように促した。
しげるは疑問符を浮かべまくっていたが、素直に後ろについてきた。
全く、こんなのは頼れるお兄さんがすることでは絶対無いな。
俺は自嘲の笑みを浮かべながら寝室のドアを開けた。



























このショタコン!森田の変態!サイテー!
突っ込む突っ込む言いすぎじゃない・・・。



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