西浦

□夕焼けこやけの鳴る頃に/タジミハ
1ページ/2ページ

どこからともなく聞きなれた音楽が街に響き、
暖かい。でもどこか寂しくなるようなから風が吹いて、

赤と黒のランドセルをしょった子供達が笑いながら駆け出してたり
大きな買い物袋を持ってる姿があちらこちらに見えるようなこの時間帯。


普段ならまだグラウンドで汗流してるような時間帯だから、どこでもあるこの光景にすら新鮮さを感じてしまうくらいで。


まだまだバイバイする時間にしては早くて、
だけどいつものように手を繋いだりくっついたりするにはあまりにも人目が多くて。

俺たちにしては不自然な距離を持って通いなれた三橋の家までの道のりを二人で歩いていく。


普通のこの距離すら寂しくなって、近くに三橋がいるのに遠くにいるような感じがして。


何度も手を繋ごうと手を伸ばした。
手を伸ばせばいつでも届く距離にいるのにソレをするにはまだ捨てきれないものがあって。



他愛もない話をしてる時に訪れたほんの少しの沈黙のあとにほんとに小さな声で三橋が呟いた。

「…学校だったら、いい…のに」

街の音に消えてしまいそうなくらい小さな音だったけど三橋の声はどんなに小さなくても聞きのがさない自信はあったからその言葉にだらしなく顔が緩む気がした。
嬉しくて 嬉しくて。


さっきまで三橋の家の近くだからって人目を気にしてた自分が馬鹿みたいで。
そんな小さなことに気にした自分が自分じゃないようで、


思うままに三橋を自分の方によせた。

「うぉ!た たじまく、//そ 外!み みんな 見て」

「見ても何もおかしくねーって!ただ肩だきあってるだけだし!仲良しなんだって思われるだけだって!
ってかもう限界−−!!
ゲンミツに我慢しようと思ってたけどやっぱ無理だ!三橋補充させて」


「うひ。あ あのね、俺もた 田島君に ずっと触れたかったんだ//」



まだまだ外は明るくて
手を繋いで帰る親子達や
遊びながら帰る子供達、
街脇に連なる家々からお腹によい刺激を与えるような匂いが風にのってくるこの時間帯。

少し寂しくて暖かいこの時間帯。


引き寄せた肩をそのままにさっきよりも近づいたいつもの距離で触れるだけの口づけをおとした。


人目を気にして、
我慢したあとの
この時間帯の口づけは、
初めての時のようにちょっとドキドキしてやっぱり甘くて。


二人の後ろの長い影もたった一瞬いつもの距離に重なった。



「みはし!三橋ん家帰ったらずっといちゃいちゃしよーな!」

「〜っつ///」



−−−いつもより早いこの時間。
だけどいつもよりずっと長く一緒にいれるような気がしてしまうこの時間。



→end
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ