西浦

□線香愛火/イズミハタジ
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『じゃぁさ、日曜日練習終わってから行こうな!!』

『おう』

『う、ん。た 楽しみだね!!』





***

「〜ゔぅ」


「泉〜どうだった?」


「37,6゚c まだ上がりそうだな。」


「やっぱりな〜。なんか三橋今日は無理してんなって思ったんだよ」


「お オレだいじょーぶだよ? オレ平気、だ!!部活も 出来たから…お祭行こう?」


「絶対駄目だ!!」
「ゲンミツに駄目だぞ!!」





ハードとなる練習内容に伴う空腹感を補うべくコンビニに寄ることはもはや恒例となってきたある日のこと。

お腹の足しとなる物を買いコンビニの外に出るとすぐに泉君が隣にきてくれた。そして遅れて外に出てきた田島君も当然のように隣にきてくれて、
皆より少し離れた所で三人だけの時間。
それが当たり前となってることが凄く嬉しくてきっと俺、変な顔してる。
だけど仕方ないんだ、二人が特別だから。


田島君が少し興奮した様子で袋の中から一枚の広告を見せてくれた。

その広告には7月18日に花火大会があるということ。

この日は泉君と田島君が友達から俺の特別になった一年目の記念日でもあった。
公に出来ない関係だから祝福なんてないけどこの日は本当に大切な日。

一緒にいることは決めていたし、俺の家でお泊りして朝までずっと二人といれることだけでも幸せだ。
だけど願ってもなかった行事があって、特別な一日を大好きな人と花火が見れることが嬉しくて。

それにお祭りなら男同士行っても目立たないし
人込みにまざってしまえば、く くっつくことだって出来る訳で、皆花火に夢中で俺達を気にする人なんていないから堂々と出来るなって泉君も田島君も笑いながら、楽しそうにしていた。

俺もずっと楽しみにしてたんだ。
この日がくることをずっと、ずっと!!



なのに・・


「なー田島、今日は祭諦めようぜ。いくら平熱っても今人込みの中わざわざ入るなんて自殺行為だろ」


「お‐だな!!祭なんて来月も違う地区でもあんし、そん時行こうぜ〜三橋」


「だ 大丈夫だよ!!オレ祭二人と行き、たい」


我が儘言ってるって分かってる。
他の皆も自分さえも気づかない体調の変化にいち早く気づいてくれた二人が心配してくれてるのに…
だけど今日だけは。
どっちかなんて決めれない俺を、呆れるでもなくしっかり受け止めてくれた一年となるこの日だけは‐…


もしかして二人はそこまでこの日に思い入れはないのかも…
だって女々しいよね・・

情けなくて涙がこぼれ落ちてしまう。



「…っう、」



「三橋!!?泣いてんのか?」


「三橋、俺も田島も今日はずっと側にいるぜ!!だから泣くなよ」


そういって泉君が頭を撫でてくれる


「三橋のおばさん帰ってきても今日は三橋の側にず〜〜〜っといるかんな」


そういって田島君が手を握ってくれる


「…え で でも 泉く、も田島くんもお祭り 楽しみしてたよ?」


「ちっげぇ‐よ三橋ぃ。俺も泉も祭が楽しみなんじゃなくて、三橋がいるから祭も花火もイチャイチャも楽しみにしてたの!!」


「そーゆうこと。三橋がいれば俺達は何でも楽しめんだよ。それにこんな大切な日に一緒いねぇなんてあるわけないだろ。俺は外より家のがやっぱ好きだよ、堂々とくっつけるしな」


「ふひ///泉く」


「あーずっりぃ俺も俺も!!三橋と家ん中でいちゃいちゃすんの大好き」


「田島く//俺もだ、よ//」


泉君が左側に田島君が右側に布団の中に入ってギュッとされて、ふたりの暖かさに段々と瞼が閉じてくる。
二人が頬にキスしてくれて俺はそこで意識を手放してしまった。



目が覚めると二人が線香花火を持っていた。
自分が寝ている間に泉君が買ってきてくれて、田島君は俺が起きた時一人にならないようにずっと側にいてくれて。



本当は夜空に輝く花火を見ながら「俺の 気持ちもあんなに おっきいんだ」って言いたかったけど、線香花火のようにどんどん膨れ上がる様子も昨日より今日、今日より明日って二人が大好きになる俺みたいで、

それに水面に落ちる火種をみるとまるで打ち上げ花火のように広がったのを見てたら、泉君も田島君も「打ち上げ花火みたいだな」って笑ってくれた。



打ち上げ花火のように派手さはないけれど
線香花火のようにじっと膨れあがる俺の想いはこれからもどんどん大きくなって、光り輝くよ。


「泉く、田島く!!だ 大好き、だ!!」





‐‐‐‐もっともっと大きくなれ、線香愛火!!




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