西浦

□悪いのは俺かお前か/イズミハ
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空が夕焼け色に染まった頃、

友達とふざけ合って叫ぶ声や笑い声に溢れて、いつもは運動部で賑わうそのグラウンドも今では違った賑わいを見せていた。


水谷が何か騒いでて阿部に叱られ花井が宥める姿やバイトだからと言って足速に帰っている浜田、クラスメートと騒ぎながら帰る田島の姿もそこにはあり、頬づえをつきながら見ていた俺は自然と笑ってたんだろう。


「いずみく、外なにか あった?楽しそ−、だ」


ふと声がする方に外から目を戻す。目の前には三橋。机を挟んだ状態で三橋はにこにことこっちを見ていた。

「いや。ただ田島達がすっげ−騒いでるからさ。」

「ほんと、だ。楽しそうだ、ね!!」


三橋が最近よく見せるようになった笑顔。
それを目前にして何とも思わない奴なんているんだろうか。
猫毛のふわふわした髪が、夕焼け色に栄えて映っておりとても綺麗で・・・
気づいた時には三橋の髪に触れている自分がいた。



「だな。んなことより、終わった?」


「あっ、ま まだ;ご 御免ね、も、もう少しで、終わるから」


焦りながらも再び日誌に取り掛かる三橋。「焦んなくていーぞ」と言いながら、今度はグラウンドじゃなく必死に日誌を書く三橋に目をむけた。



“そんなの適当でいいって”俺の言葉に、「今日あったことをて 適当にしたくないん、だ。俺ここに きて、み 皆と仲良くなれて い いつも 嬉しくて楽しい、から。」いつも以上にはっきりと答えた三橋。

その言葉通り、きっとほんとは文章にするのなんて苦手だろうに、日誌の最後に書かれている【一日の感想】にシャーペンが一生懸命動いていた。





大好きなやつと教室で二人っきり。
それなのに三橋はさっきからずっとノートと向き合っていて…

大きな目も

何故かいつも甘く感じる唇も

男にしては少し高めな可愛い声も
なにもかも隠れてて、ただふわふわした髪が目の前にあるだけ。

さっきからずっと弄ったりしてるのにその反応すら返ってこなくて、
なんだか自分が日誌なんかに負けてるような気になったから・・・



「三橋−?」

「な、に?」


返してくれるけどまだ三橋は俺を見てくれなくて、

「みはし」

「三橋」


髪をいじりながら何度もその名前を呼んだ。三橋も最初は戸惑っていたようだけど、返事をしても名前を呼び続ける俺にクスクス笑いながら「な、に」と答えシャーペンを動かしていた。



声は出してくれたけど一向にこっちを見ない。

だから・・・



「廉」

自分でも分かるくらいに甘みを含んだ声を耳元で呼びそっと三橋の横髪を耳にかける。


「っ/////い、いずみく!!!!」

真っ赤になった三橋が顔を上げ大きな目が俺を捉えた。
大きな目には潤みを含み俺が口元を寄せた耳を手で抑えながら、口を金魚のようにパクパクとさせている。

やっとこっちを向いて、しかもそんな可愛い反応を見せる三橋にしらず俺の顔も緩む。

「三橋が悪いんだぜ?」


「ぅえ!??…で でも邪魔したら、駄目、だ。オ、オレが耳、弱いの 知ってる でしょ//」


「耳だけじゃないのも知ってるけどな。」


「っ、うぅ〜///い 泉くん意地悪な 顔 してる//」



多分三橋は睨んでるつもりなんだろう。だけど逆効果。
そんな赤い顔して睨んでたって全然怖くないし、むしろこんな表情を見せる三橋も可愛いな、だなんて大概俺も終わってる。



「も もう終わるから。ちょっと 待って、て」


日誌に目を向けると本当にあと少しだったから三橋の言葉通り邪魔しないで待っててあげよう。


だから、三橋が「終わった」その言葉と同時に唇を塞いだって文句は言わせない。



どーしょうもなく好きな奴が手の触れる距離いて、
普段使う教室に二人っきりで、

手を出さない男なんていないのだから・・・。

−・・・我慢させたお前が悪いんだぜ?






→end
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