西浦

□生まれた日に/タジミハ
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「…こねぇ〜」


部屋の電気はすでに消していてベッドに横になっているから後は目を閉じればいつだって寝れる体勢で・・


暗闇の中での携帯ディスプレーの光りはとても強く感じ、それでも携帯を見ると次から次に受信を知らせるランプの色。


ディスプレーに表示されているのは《10月16日0:06》


自分の誕生日を祝おうとクラスメートやチームメート、中学の友達、中にはアドレスを交換した他校の奴からも律義にメールが届いている。


それら全てが本当に嬉しいしすぐさまお礼の返信をしたいのだけど、メールは今だ一通も未開封のままだった。



誰よりも一番に自分を祝って欲しいと思っていた大切で大好きな三橋から電話は疎かメールですら来ていない。
今日はいつものように学校も練習もあったし、朝は早く帰りは遅いからきつくて寝てしまうのは仕方ねぇかって思う反面、あいつらからは来てんのになとか付き合ってるのにとかの気持ちが強くモヤモヤしたものがどんどん膨らんでくる。



携帯のランプがつく度に期待してしまう自分とそれが三橋じゃないと分かって落ち込む自分が嫌で携帯を裏返しにして、もう眠ってしまおうと枕に伏せ固く目を閉じた。


「………三橋の、ばぁか」




**

あれからどれくらいたっただろう。
一日の疲れからか目を閉じれば眠気なんてすぐ来るもので、眠りについていた頃ふいに頭元にあった携帯のバイブが動きだした。
眠り目で携帯に映し出された名前を確認すると一瞬にして眠りなんて吹っ飛んでしまった。


《着信 三橋》


ずっと待っていた人だったから電話が来たのは凄い嬉しいはずなのに…素直に喜べなくて少し躊躇った後受話器ボタンを押すと聞こえる愛しい声。


「た たじまく、ん。寝てたよね…ご 御免ね。お おれ 言いたいことが、あって・・・」

「………なに?」

「う…あ あの お 怒っている?」

「怒ってない」

「…」


阿部とか花井に話してるような声で三橋がびびりまくってるのが分かる。モヤモヤした気持ちはあったけど誕生日に喧嘩するのは絶対嫌だったから

(ゲンミツにいつものように)


「寝起きだったからかも。ゲンミツに怒ってねぇよ、ごめんな三橋。」


「そ、そっか。よかった、えっと、あのね・・・
たじま君 生まれてきてくれてありがとう。
た誕生日 おめでとう」


「…よかった〜。俺ずっと待ってたんだぞ!!
忘れられてんのかってゲンミツに落ち込んだ」


「わ 忘れるなんて絶対ない、よ!!
田島君 今何時だと 思う?」


「?ん〜っと2:38」

近くにあった時計を見てあぁこんな夜中なんだと思ってますます三橋がこんな時間にかけて着た事に不審がる。

(三橋は忘れてたような感じしなかったし…こんな時間に何かあったけ?……………あっ)


まさかとは思ったけどこの時間に電話かけてきてくれるってことは、

「…俺の生まれた時間?」

「うん!!あの ね オレいつも一番におめでとう言いたいって思ってたけど、田島君が本当に生まれた時におめでとうが言いたいなって思って。そいで、おばさんに 内緒で聞いたんだ。
12時ぴったしに言えなくて 御免ね。」


「…ずるい」


「うぇ!?」

「ゔ〜〜三橋のバカ!!この時間まで起きとく方が大変じゃんかよ。
ゲンミツに今三橋に会ってギューってしたい」


「ふひ//今からは 無理だ、よ」


「ちぇ。なら明日の朝な!!約束な!
すっげえ嬉しい!!!!
三橋〜〜〜大好きだ!
愛してるからな!!三橋は?」


「〜〜〜っ。オレは田島君のがずるいと思う。」

「みぃはし〜」

「…………田島君が大好きだ、よ。あ あいし、て ます///うぅ。 じ じゃぁおやすみ!!また明日ね」



乱暴に切られた電話。
きっと今頃顔真っ赤にして布団を頭から被ってるんだろうな〜なんて想像ついて、愛しい気持ちが膨らむ。


きっとこの時間帯に電話しようと眠たい目をこすって待ってくれたんだとか自分が生まれたことを本当に祝ってくれてるだと思うとさっきまでのモヤモヤなんて嘘みたいに消えて。


つい涙ぐんでしまったことは三橋には内緒だ、ゲンミツに。

(こんな嬉しいことをしてくれた三橋が悪いもんね)




明日の朝早く起きて、三橋の家の前で待ってようなんてことを考えながら今だ未開封のメールを一通づつ開いていった。



→end
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