西浦
□聖なる夜に/イズミハ
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「孝介〜〜ほんとに大丈夫??」
一階から聞こえるバカでかいお袋の声で重たい体をなんとか起こしてドアを開け玄関で靴をはきながら心配そうにこっちを見るお袋に、
「大丈夫だって。親父車で待たせてんだろ、早く行けって」
「そぉ?今日お兄ちゃんも帰ってこないからね、何かあれば必ず電話するのよ!!それとご飯は、「あーはいはい!!何回目だよそれ言うの!!飯は冷蔵庫と鍋に粥が入ってんだろ!!!分かったからもう行けって」
「もー、なら行くわね。
分かってると思うけどあんた熱下がってないんだから出かけるとか馬鹿せんのよ!!!」
お土産買って帰るからとはしゃぐ母親の後ろ姿を見送り 再びベッドに戻った。
「はぁ−だりぃ−」
静かになった家の中では声が響くように感じる。
熱は37.6度
昨日よりは下がっているが滅多に風邪など引かない泉にとって二日間の高熱には体力の消耗は大きかった。
今日は三橋と約束してたクリスマスデートの日。
三橋と恋人になって初めてのイベントに浮かれてしまうのは三橋だけじゃない。
泉だってこの日をイルミネーションが始まった時からずっと楽しみにしてたのだ。
それなのに−…
「−っ熱とかまじありえねぇ。」
熱は下がった。だけど完治したとは言えない。体だってだるいし咳だって出る
もしこのまま遊び行きたいからって会ったりしたらきっと三橋に風邪移しちまう。
そうじゃなくても三橋は熱を出しやすい体質だし、熱をだしたら俺みたいに練習を何日も休まなきゃなくなる。
そんなの投げるの好きな三橋にとって辛いだろうし、阿部にどなられる三橋の姿なんて見たくない。
ほんとは昨日だって、行かないって言ってくれたのは嬉しかった。
かっこつけたことばっか言って行かせたけど、あんなの俺の強がり。
『行くな、俺んとここいよ』って言ってしまいたかった。
「かっこわりぃ、俺」
あいつらに囲まれて笑ってる三橋の姿なんて考えたくなくて 眠りにつこうと目をきつく閉じた。
プルル、プルル〜♪
「……はい、誰?」
「よ−いずみぃ!!!!!
大丈夫かぁ!!!?」
このテンションの高さはあいつしかいない。
「んだよ 田島。お前うるせぇ〃部活終わったん?」
「おーさっきな。で、熱下がったか??」
目が覚めて外を見ればすでに暗くなっていた。時計は7時すぎをさし きっと今は部室で着替えてんだろう。後ろからざわざわと聞こえる。
「熱は下がった。明日には復活する!!」
「そっかよかったな。今日はゆっくり休むんだぞ!!!皆心配してたんだからな」
「おう悪ぃな。……なぁ田島………あのさ そこに三橋いる?」
三橋とはメールで連絡とってたけど声が聞きたくて田島に聞くと「三橋ならもう帰ったぞ」と返答された。
それからは汗かいた体を洗ったり飯食ったりしてテレビを見ながらごろごろしてると、薬が効いてきたのか眠くなり部屋に戻ってベッドに入ろうとした時
窓にコツンと何かがあたる音がした。
気のせいかっと思ってシカトしてると
コツン
また一つ。
窓を開けて下を見ると
「い 泉君 !!」
鼻を赤くした三橋が下に立つていた。
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