書庫(長編) 第二巻
□其ノ拾
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あの戦いが終わったあと、百華の名はすこぶる上がった。どのチームにも屈しない一本筋が通っているという風評が高まったからじゃ。それに伴って、百華に入りたいという女子も、かなり増えた。
「何故に百華に入ろうと?」
「あの戦いの話を聞いて、あたしもここに入りたいと思って」
「厳しいぞ。自分の意を貫き通すなら、かなりの苦労を伴う。それでもいいのかえ?」
「キャー、生の廓言葉聞いちゃった!」
「なっ、ぬしら」
どうやら、総長であるわっち目当ての女子が相当おるようで。巷には、わっちの廓言葉を真似る者もおるようじゃった。
そうしたいわゆるミーハーな希望者には、お引き取り願った。そういう輩は危機にあったとき、すぐに逃げ出す傾向にあるからじゃった。
「総長、基準が厳しすぎませんか?あたしらの時より、段違いで厳しいような気が」
「そうじゃろうな。わっちは百華を大きくしたいとは思っておらぬ。入るならば、全員が認めた者。これに限る。数が多ければいいというわけではない。それはぬしも分かっているはずじゃ」
「それは・・・そうですね」
副長の蓮華が苦笑いして答える。
「規模は小さいが、どこからにも一目も二目も置かれるチーム。わっちは百華をそうしたいんじゃ」
「そうですね。メンバー選考はあたしたちがやります。総長は最終的な選考をしてください」
「わかった。では、頼んだぞ。わっちらは今まで通りにしてればよい。変に欲を出してはならぬ」
「はい、わかってます」
大きく変わろうとしている。百華は誰にも縛られることのない、自由なチームでありたい。そのために戦い続けた。変わらずとも、わっちらはうまくやっていける。
そんな事を考えながら歩いていると、わっちを呼ぶ声がした。
「お〜い、ツッキー!」
「おう、神楽か。久しぶりではないか」
「あい変わらず、いいパイ装備してんなぁ。くれ!のしを付けて私にくれ」
「昔はくれてもよかったが、今はちとやれぬわ」
「えぇ〜、何でだヨ?」
「ちとな、やれぬ理由が出来たような」
夜兎の総長である神楽じゃった。会えば雑談を交わす、よき友達でもありんす。話の掴みは、必ずといっていいほど、おっぱいの話でありんした。
わっちの胸を見つめる視線がとにかく熱い。豊かな胸に羨望の眼差しを向けてくる。
「まあまあ。ぬしくらいの年では、わっちはペッタンコでありんした」
「おお、マジでか!どうすれば、そんな方向にギアチェンジするアルカ?あれか、『ありんす〜』とか言えばいいアルカ?」
「いや、それは関係ありんせん。しっかりと栄養のある物を食べれば自然と大きくなりんす」
「好きな人に胸を揉まれれば、大きくなるとも言ってたアル」
「それはわからぬ。わっちには好きな人もおらぬが、これじゃぞ」
「それが気に食わないアル」
神楽との会話で、わっちは少し肩の荷が降りた気がした。会話が弾んで、考えていたことを忘れてしまいんした。