書庫(拍手)

□2009年12月
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『遅ればせのクリスマスを一緒に』


「来てもらって礼を言う。月詠でありんす。世間ではクリスマスだのなんだので賑わっておりんす。しかし、吉原を守るわっちらには、そんなの関係ありんせん。賑わっておるときには、あちらこちらで騒ぎが起こるというは世の常じゃ。じゃからこそ、こうしてわっちら百華が目を光らせておかねばならぬ。む、何やら怪しいヤツが近づいておる」

「メリークリスマース!」

「・・・」

「・・・メリー、クリ」

「・・・・・・ヒュッ」

「痛っ、てて、痛えじゃねえか、コノヤロー。無言で苦無投げてんじゃねえよ」

「誰じゃ?ぬしは」

「普通、聞いてから行動に入るもんだよね?やる順番、見事なくらいに逆だよね?」

「見るからに怪しいんじゃ。牽制の意味を込めて、威嚇してみんした」

「威嚇じゃないから。思っきし、殺害の工程入ってるから。たまんねえよ、こんなめでたい時に殺人ネタは。あ、来てもらったみんな、メリクリ〜!銀サンタこと坂田銀時だ」

「ぎ、銀時じゃったのか?・・・てっきり、わっちは変質者かと」

「やっちまったよぉ・・・って、そんなノリじゃねえよ。子どもたちに幻想と現実を与えるサンタクロースじゃねえかよ。どこから見ても!」

「すまぬ。どこが幻想と現実を与えてくれるのか、教えてくんなんし?」

「まあいいや。お前はまだ仕事か?」

「見てのとおりじゃ。こうした時は事件や騒ぎが起こりやすい。今は収まっておるが、さっきまでは酔った勢いで・・・というのが多発しておった」

「なるほどな。大変だな、お前らも。百華はフル稼動か?」

「いや、部下の中にも男ができた、彼氏ができたという者らがおっての。どうしてもと言うので、その者らは外しておる」

「へっ、あいかわらずな気ぃ遣いだな。おっ、ちょっと待ってろよ。えーと、これだったけかな?ほい、お前に」

「?何じゃ、これは」

「まあ、知ってのとおり、そんなに期待はするな。その、何だ、クリスマスプレゼントってヤツだよ」

「銀時、わっちは子どもではありんせんが?」

「バッカ!クリスマスはなあ、子どもじゃなくて、好きなヤツにもプレゼント贈ってもいいんだよ」

「そう、なのか?じゃったら、わっちも銀時に贈らねば。じゃが、わっちは何も用意はしておらぬ」

「いいよ、俺が望んでしたことだ。見返りなんざ求めてねえから」

「それではわっちの気が・・・」

「いいから」

「いや、それでは困る」

「気をつかうなって」

「そうはいかぬ」

「だから・・・はぁ、じゃあ、こうするか?今から、『ひのや』へ行って俺とクリスマスを一緒に過ごす!どうよ?」

「ふふっ。その申し出、乗った!」

「じゃあ行くか。遅ればせながらのうちらのクリスマスによ。ご覧の皆も、よいメリクリ送ってくれよな」


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