書庫(長編) 第二巻

□其ノ拾壱
3ページ/4ページ



わっちはバイクを走らせておりんした。沈み行く夕焼けが本当にキレイでありんす。やがて、大橋に差し掛かる。前に行く車もなく、スピードを上げて大橋を通る。

大橋も終わりに差し掛かったとき、わっちは奇異なものを目にした。橋の下に一人の男が倒れておるではないか。そして、その男は特徴的な銀色の髪をしておりんした。


「まさか」


わっちは妙な胸騒ぎを覚えた。大橋を渡り終え、近くの路肩にバイクを止めた。そして、男が倒れている場所へと向かう。

うつぶせに倒れていた男は、学生服もボロボロであり、傷だらけであった。近付いていくと、その男はわっちがよく知る人物でありんした。


「銀時!」


わっちは銀時の体を起こし、安否を確認した。


「銀時、銀時!しっかりしなんし、目を開けてくんなんし!」


銀時の頭に触れた、わっちの左手はベットリと血が付着しておりんした。わっちは取り乱してしまった。銀時が死んでしまうのではないのかと。

急いで救急車を呼び、わっちは自分に出来うる蘇生術を銀時に施した。やがて、救急車がやってきた。救急隊員が銀時を救急車に運び入れ、わっちはバイクでその後を追った。


病院に搬送された銀時は、すぐに治療を施された。やがて、集中治療室に移されたのじゃが、その間、銀時の目が開かれることはなかった。

わっちは医師に呼ばれた。


「先生、どうなんですか?」

「命には別状ない。ただ、全身打撲の状態で、頭は何か硬いもので殴られている。命があるのが不思議なくらいですな。普通の人なら、間違いなく死んでいてもおかしくはない。もしかすると、このまま目を覚まさない恐れもあります」

「そんな、このまま目を覚まさないなんて」

「あなたが助けたのが結果的によかった。確かに普通の人よりは頑丈であっても、発見が遅ければ最悪の結果になっていたでしょうから」

「あの人は」

「彼次第でしょうな」

「少し、見ていってもいいですか?」

「面会終了までは問題ありません」

「ありがとうございます」


わっちは医師にお礼を言って、銀時がいる集中治療室に入った。眠る銀時は痛々しくて、わっちは直視することを憚るほどじゃった。それほどに、銀時の存在が大きくなっておる証拠であろうか。


「銀時、ぬしのこのような姿を見ることになるとはの。予想だに出来なんだ。ぬしをこのようにしたは誰じゃ?悲しいとか、そんな言葉じゃ言い切れぬ。なあ、目を覚ましてくんなんし。頼みんす、願いを聞き届けてくんなんし」


ひたすらに願った。銀時が目を覚ましてくれることを。銀時が元気に回復してくれることを。


NEXT>>あとがき
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ