書庫(キリ番)
□譲れないものが人には一つくらいはある
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月詠は呼び出されて地上へと出て来た。呼ばれた理由は、『超パフューム』の会合との事らしい。月詠は指定された場所へと向かう。そこは会合場所には似つかわしくない、廃ビルであった。
月詠は怪訝に思いつつ、階段を登っていく。最上階で行うとの事だったからだ。そして、最上階に辿り着いた月詠は辺りを見回した。
人がいる気配はない。早く来過ぎたのだろうか。そう月詠が思い始めた矢先、何かが自分に向かってくるのを感じた。素早く身を屈め、月詠は身構えた。やがて、こちらへ向かってくる足音が聞こえる。姿を見せた人物に、月詠は驚きを隠せない。
「ぬ、ぬしは…誰じゃったかの?」
「いい度胸じゃない。私を忘れるとはね。超パフュームのセクシー系担当、猿飛あやめを忘れるなんて」
「猿飛あやめ、猿飛あやめ…あ、思い出した。さっどん!さっどんか」
「なんだよ、そのさっどんてのは。あたしはMだから。Sじゃないんだから」
「すまぬ。SとかMとか、それはどういう意味でありんしょ?」
「相変わらずのカマトトぶりね。そこまでいくと見上げたものだわ。呼び出したのはあたしよ。超パフュームの会合なんて、ありはしないわ」
「そうか。会合はないか・・・では帰りんす」
「ちょっと待てくぅおらああっ!あなたには用がなくても、あたしにはあるんだよ!」
キョトンとした目つきで、月詠はさっちゃんを見つめる。彼女に会ったのは、人気投票での時だった。何か最後は掴みあいのケンカ寸前のところまでいった、ような気がするとおぼろげながら月詠は思い出していた。
「最近、巷では“銀月”という単語がまことしやかに囁かれているようだけど、あなたはご存知かしら?」
「銀月?さあ、何のことかわかりんせん。よかったら、教えてはくれぬだろうか。さぎっちょう」
「なんだよ、さぎっちょうって。火祭りか?確かにいまのあたしは燃えているけど。さっちゃんだから!さっちゃんと呼びなさい、ツッキー!」
「すまぬ。じゃあ・・・さっちゃん?」
「何で疑問形なのよ。ほんとにさっちゃんっだから。話を続けるわ。銀月とは、銀さんと月詠のカップリング、ちなみにあたしと銀さんでは“銀さち”と呼ばれているわ。pi○i○で、銀月での検索結果116件、銀さちでの検索結果29件。ニコ○コ○画で、銀月での検索結果37件、銀さちでの検索結果1件。明らかにあんたと銀さんとのカップリングがいいんでない?と認知されているわけよ」