書庫(蜃気楼)
□弟が男になった時、姉は女になる?
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「神楽ちゃん、神楽ちゃん。起きて」
誰かの呼ぶ声に、神楽は意識を呼び起こされる。まだ頭がボーッとした状態であり、眠気眼で辺りを見回した。
「誰アルカ?まだ私は眠いアル」
「何言ってんの、もうお昼時だよ。起きないとダメだよ」
「うーん、私、もっと寝てたいアル。って、んんん???」
神楽は自分の異変に気付いた。一番の変化は盛り上がった胸である。自分で揉んでみると、弾力ある柔らかい感触が手を通して伝わる。
「おおお、ポヨポヨしてるアル。私のアルカ?これ。こんな武器、いつの間に搭載されていたアルカ?まさか、改造手術でも受けたんじゃ?」
「はは、それはないよぉ。正真正銘、神楽ちゃんの胸だから」
「本当にカ?って、さっきから思ってたけど、お前、誰アルカ?」
神楽は傍にいる男に問いかけた。見覚えのある顔ではある。しかし、背は自分よりも大きく、大人びた印象を受ける。
「神楽ちゃん、わかんないの?」
「ゴメン、見覚えはあるんだけど、イマイチ思い出せないアル」
「オイラはずっといるから、ゆっくり思い出してよ。でも、傷付くなあ」
男にそう言われ、神楽は必死に思い出そうとする。栗色の髪に、目鼻立ちのはっきりした顔。そして、オイラと自分を呼ぶ男。答えが出た・・・ような気がするが。
神楽は自信なさげに、男へ自分の答えを述べる。
「もしかして、晴太アルカ?」
「やっと、思い出してくれたんだね。忘れてたらどうしようって思ってたからさ」
まさかとは思ったが、今、自分の目の前にいる若者が晴太であるという事実に、神楽は信じられないという表情を浮かべる。
「あ、マジでか?って思ったでしょ?でも、これは本当だからね。神楽ちゃんだって、自分の体見てびっくりしたじゃない」
笑いながら晴太は話した。信じられない。自分と晴太が成長していることに。そして、目の前の晴太に心がざわついている自分自身に。
「せ、晴太。私、いや、私と晴太はどうして成長してるアルカ?」
「何言ってんのさ。オイラ達は普通に日々過ごしていったんだから。そりゃあ、成長するのは当たり前じゃないか」
「そ、そうアルナ。成長期だもんな、私達。ははははは」