書庫(蜃気楼)
□柔らかな風に抱かれて
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志村新八は、パンデモニウムを連れて公園へやってきた。新八と一緒に来られて、パンデモニウムは嬉しい気持ちでいっぱいだった。
「あの、新八様?」
「どうしたの?パンデモニウムさん」
「その、何て言うか、重いでしょ?私」
「そんな事ないよ。パンデモニウムさんこそ、苦しくはない?痛くはしていない?」
「うん。私は平気だから。私、とっても嬉しいの。新八様とこうしてお出かけできるのが」
パンデモニウムは新八に産衣でくるまれて出かけていた。顔は美少女顔なんだが、それ以外は人外のままなので、産衣にくるんでいたのだった。
新八の胸に抱かれているパンデモニウムは、終始顔を赤らめていた。新八の胸に抱かれ、彼の心臓の鼓動を聞いて胸がドキドキと高鳴っていた。
「パンデモニウムさん?どうかしたの?」
「え、あ、何でもないの。ちょっと」
「嘘だ。パンデモニウムさん、僕にはわかるんだよ。パンデモニウムさんが嘘をついているのが」
「え、どうして?」
「前髪をいじってた。パンデモニウムさんは焦ったり隠し事してるときは、そうしてるから」
パンデモニウムはこれ以上ないほどに赤くなった。
「新八様のバカバカバカ!」
「あ、ああ、ごめんね。パンデモニウムさん」
「ウ・ソ!私が新八様を嫌うはずないもの。さっきはね、新八様に抱かれて胸が、ドキドキしちゃったの」
「え、そうなの?」
一人と一匹はしばらく無言のまま俯いていた。新八はこんなのキャラじゃねえよとセルフツッコミしながらも、糖分高めの甘い展開に酔っていた。
「そうだ。ちょっと、そこらへん歩いてみよっか。いい風が吹いていて、気持ちいいから」
「うん♪」
一人と一匹は公園をしばらく歩いていた。パンデモニウムは新八がいるだけで、こんなにも世界が変わるのだと思った。自分に笑いかける新八につられて、自然と笑みがこぼれてしまう。
一方の新八も楽しそうに笑うパンデモニウムを見て、気分が昂揚してくるのを感じていた。本当に可愛い、本当に焦がれている。一緒に楽しくなれる存在、このままずっといたいと思ってしまう。
そして、新八は芝生の上にパンデモニウムを置いた。芝生の上に置かれたパンデモニウムは、その横に座った新八を見ている。