書庫(記念・企画)
□何でこんなベタ展開
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「あああ、眠い」
坂田銀時は気だるそうに目を覚ました。いつもなら一人で寝起きしているのだが、今朝は一人ではない。万事屋にやってきた月詠と一緒に眠っていたのだった。
銀時は辺りを見回した。いつもと変わらない光景。隣には・・・銀時が眠っていた。
「あらぁ、相変わらずいいお顔ですなあ。俺ってば、こうして俺の寝顔を見れるなんざ初めてだな。・・・・・・あれ?」
銀時が銀時を見つめている。そんな中、眠っていた銀時が目を覚ました。
「ん、ふああ、もう朝でありんすか。いつの間にやら、眠っていたみたいじゃな」
「おい、何かおかしな事になってんぞ。ちなみに確認しておくが、お前は誰だ?」
「はあ?何をバカなことを言うておるんじゃ。わっちは月詠でありんす・・・と」
目を疑った。月詠と名乗ったはいいが、目の前にいるのはまぎれもなく自分の姿であった。問うた銀時も呆気に取られている自分の姿を認めた。
「銀時、これはもしかして」
「もしかするな」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「あああああああああ!!!!!」」
事の次第を二人は把握した。銀時と月詠、二人が入れ替わってしまったのだ。つまり、銀時が月詠で、月詠が銀時という異常事態になってしまったのである。
銀時(月詠)が言った。
「何でこんなことになったのじゃろう」
「何でかか、う〜ん。いつの間にか寝ちまったって感じだったしなあ。寝る前は・・・そうだ!やり終わって、上のお前が疲れ果てて」
「疲れ果てて、あ、力が抜けて、ぬしの方へ寄りかかったとこから覚えておらぬ」
「おそらく、その時に入れ替わったんじゃねえの?そこから記憶がねえんだから」
「そう考えた方が妥当じゃな。しかし、どうしたらよい?解決の手立てすら思いつかぬしの。それに見回りをせねばならぬし」
思案する銀時(月詠)を見ながら、月詠(銀時)は楽観的に言い放った。
「元に戻るまでは、このままで過ごすしかねえだろ。元に戻る手立ても見つかるかもしれねえし、突然元に戻るかもしれねえし」
「はあ、仕方ないのかの。では、わっちはぬしとして、ぬしはわっちとして、しばらくは生活していかねばならぬな」
「そうだな。で、今日のお前の予定は?」
「ふむ。午後より百華での集まりがあり、夜には見回りをせねばならん。で、ぬしは仕事はないのか?」
「ん〜、ここしばらくはねえなあ」
「聞いたわっちがバカじゃった。銀時、変なことをするでないぞ。淡々とやっておればよいからの」
「お前こそ、俺の体でよからぬ事をするんじゃねえぞ」
そう言って、二人は身支度を整える。月詠(銀時)は吉原へと戻っていき、銀時(月詠)はこれを見送った。入れ替わった二人の奇妙な生活が、今、始まった。