書庫(記念・企画)

□夏のせいにしちまえば
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坂田銀時は、神楽と志村新八、そして、月詠と晴太を連れて奥出瀬渓流へやってきた。

本格的に季節は夏となり、暑さに身も心もまいってしまった銀時らは、涼を求めて渓流へと繰り出したのだった。

銀時は『ひのや』に電話を入れて、電話に出た月詠に渓流へ行かないかと誘ってみた。そうすると、月詠はこれを了承した。晴太を連れていき、自分は保護者代わりでついていくという。こうして銀時たちは下流の河川敷へ到着し、テントを張り、仕度を手短に終えた。


「よおーし、支度は終わったな。じゃあ、子供たちは遊びに行ってよし!夕方、まあ最悪でも、暗くなるまでは帰ってこいよ」

「わーい、神楽ちゃん。探検してみようよ。面白そうだよ」

「そうアルナ。晴太、新八、行ってみるアル」

「え、僕たちだけで・・・って、うわっ!」


神楽は新八の頭をヘッドロックし、耳元で囁いた。


「ほとほと、お前には絶望したアル。どこまでもKYなメガネアルナ。いいか、私らは私らで遊んで、銀ちゃんとツッキーを二人きりにしてやるネ。晴太も分かってるから、殊更に喜んで見せたアル」

「なるほどね。イテテテ、神楽ちゃん、頭痛いから離して」


新八らが遊びに出かけ、銀時と月詠はその姿を見送った。銀時は傍らの月詠に言った。


「俺らもぶらりとまわってみっか?」

「うむ。そうじゃな」


二人は川をさかのぼりながら、周りの景色を眺める。緑に囲まれた環境、飛沫をあげて流れ行く川の音が暑さを忘れさせてくれる。


「神楽たちはどこまで行ったかのう。姿が見えぬとはな」

「新八いるから大丈夫だろ。神楽が暴走しなけりゃ、あいつで制御可能だろうし」

「晴太もおるから、あまり奥まで行かねばよいが」


しばらく歩いたあと、二人は岩場を見つけた。銀時は岩場から下をのぞき見る。岩場じたい、そんなに高くなく、そこから足を下ろせば川に届きそうであった。

「ちょっと、ここでゆっくりしようぜ。歩き疲れちまった」

「体が鈍っておるからじゃ。もちっと、しっかりせぬか。子供らに示しがつかぬじゃろうに」


銀時は素早くブーツを脱ぐと、岩場に座って足を川に浸した。足先から伝わる冷たさに、銀時は歓喜の声を上げる。


「おい、すっげぇ気持ちいいぞ。お前も足突っ込んでみろよ」


その言葉に月詠は同意し、ブーツを脱いで、網タイツも取り去った。

そこで月詠の中にある思いが膨らんだ。無防備に背中を曝している銀時にいたずらしてみようと考えたのだ。


「おい、早くしろよ」

「待ちなんし。今、参るゆえ」


月詠は銀時の後ろまで来ると、そこから足先で彼の背中を小突いた。銀時は岩場の端に座っていたため、たちまちバランスを崩して前のめりになる。


「おい、何してくれちゃってんの!危ねえだろが」

「よいではないか。それに、ヒヤヒヤして涼しくなるじゃろ?」

「てめ、ふざけんじゃねえぞ。俺一人で落ちると思うなよ。落ちるなら、てめえも一緒だ!」
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