書庫(記念・企画)

□背中合わせに誓う想い
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月詠が夜の見回りを終えて、『ひのや』へと戻ってきた。戻ってきた月詠を、日輪と晴太が出迎えた。


「おかえり、月詠姐」

「おかえり、月詠。寒かっただろ、ご飯食べてから風呂へ入りな」

「うむ、すまぬな。そうさせてもらいんす。二人とも、わっちに構わず眠っておればよいのに」

「あんたが疲れて帰ってきて、冷めたご飯じゃ疲れも取れないだろ?さあ、立ち話もなんだから、早くお上がりよ」


日輪に促され、月詠はブーツを脱いで、茶の間で食事を摂る。晴太を先に寝かせて、日輪はご飯をよそってやる。日輪は月詠に話しかけた。


「どうだい?吉原の周りは?」

「平穏とは言えぬが、そんなに大きなことは起こっておらぬ。他の者らでも十分に対処は出来ておる。まあ、他の者らが成長しておる証じゃとは思うが」

「そう、よかった。吉原はよくも悪くも変わりつつある時期だから。もっとも、それを『百華』が対応しているから、そんなに大事に至っていないということもあるけどね」

「それがわっちらの役目でありんす。自由を得れば、それを妨げる輩もおるからの。じゃが、前に戻ることはしたくないからの」

「本当にそれだけの理由?」

「日輪?」

「本当にそれだけ?」

「さすがは日輪じゃな。そう、銀時たち万事屋が命をかけて得た、新たなる吉原をわっちらは守らねばならぬ。吉原を守ること、それは当然じゃが、新たなる吉原をよりよいものにする。そのためには、これまで以上に力を尽くさねば」

「その意気込みはよしね!けども、無理は止めておくれ。あたしや晴太も心配になるし、銀さんだってあまりいい顔はしないはずだから」


日輪に指摘され、月詠は思い返していた。見回りから戻ったとき、部屋にいた銀時は怪我をした自分に悲しそうで、そして辛そうな表情をしていた。そのあとに、“お前はそういうヤツだしな。仕方ねえけど”と話していた。

思い詰めた表情をしている月詠を見て、日輪が言葉をかける。


「まあ、銀さんもあんたの事は分かっているだろうけどさ。でもね、男は好きな女が傷いていているのを見るのは辛いんだ。たまには、銀さんに甘えてみな。あんたが寄りかかれる男なんて、銀さんくらいしかいやしないんだから」

「そう、じゃな。じゃがの、そうするとあの男はすぐに調子に乗ってしまいんす」


月詠はそう言って、笑みをこぼした。そんな姿を日輪は好ましく見つめていた。

食事のあと、月詠は風呂に入った。湯船に浸かり、ふう、と一息ついた。風呂から上がれば、あとは眠るだけ。少しばかり、一人寝の夜を寂しいと思いつつ、月詠は風呂から上がって自室へと向かった。
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