書庫(長編)
□其ノ壱
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坂田銀時は吉原の『ひのや』にいた。紅蜘蛛党の件が一段落したあと、ちょくちょく足を運ぶようになった。
なぜかと言えば、ひのやに住んでいる、吉原の自警団・百華の頭である月詠と懇ろな関係にあるためである。銀時は月詠の部屋で、彼女と一緒にくつろいでいた。
「いやあ、とっさとはいえ大したモンだわ。今思えば」
「何の事じゃ?」
「ほら、紅蜘蛛党に入ったときのチンピラ話」
「ああ、あれか。お主にはびっくりしたぞ。いきなりチンピラの夫婦などと言うもんだから」
「俺としては、ただ話合わせてくれりゃあ良かったのさ。そっからお前が事細かに設定加えて」
月詠は煙を吐き出すと、微笑みながら言った。
「ああして、設定を決めた方が信じやすいからの。奴等も信用しておったし」
「いや、すげえよ」
「銀時、あれはダイジェスト版じゃぞ。内容を泣く泣くカットしたでありんす」
「え、何?あれ以外に話あんの?」
「聞きたいか?」
銀時は月詠の表情を窺う。
(うわ、めっちゃ言いたそうな顔してるよ。断ったら、何されっか分からねえ)(0.02秒)
「そうだな。時間ある事だし、聞いてみるかな」
「そうか。まあ、銀時がそう言うなら仕方ない。話してやるかの」