書庫(蜃気楼)

□おめでとうが言いたくて
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パンデモニウムの言葉には打算も計算もない、心からのものである。それが新八の心にダイレクトで響き、彼をドキドキ状態へと誘っていく。


(ヤバイ、ヤバイよお。可愛すぎるでしょう、パンデモニウムさん。何て破壊力なんだ。僕には、僕には、君がまぶしすぎるよ。僕なんかが触れちゃいけない、何か神々しいものさえ感じてしまうような)


パンデモニウムは小首を傾げ、不思議そうな目で新八を見つめる。


「どうかした?新八様。やっぱり、迷惑、だったかな?」

「いやいやいやいやいや!!!そんな訳ないよ、パンデモニウムさんに祝ってもらって嬉しいんだ。だって、一番祝ってほしい人から、祝ってもらえたんだから」

「え・・・本当?何だろう、私も嬉しくなってきちゃった。人の誕生日を祝うって、こんなにも嬉しいことだったんだ。新八様も嬉しくて、私も嬉しいなんて」


そう言ったあと、パンデモニウムは押し黙ってしまう。これを怪訝に思った新八はパンデモニウムに尋ねた。


「どうかした?パンデモニウムさん、具合でも悪いの?」

「ううん、何でもないの。何でも、ないから」

「そういえば、パンデモニウムさんには誕生日ってあるの?」

「私?誕生日は、ないわ。私たちは食べられるのが宿命だから、生まれて少ししたら食べられてしまうもの。誕生日を覚える間もなくにね」

「パンデモニウムさん・・・。そうだ!こういうのはどうかな?」

「新八様?」

「誕生日がないなら、誕生日を作ろうよ。パンデモニウムさん、もしよかったら、僕と同じ誕生日なんてどうかなあ?それなら、二人でお祝いできるじゃないか」

「え・・・私の誕生日?新八様と同じ誕生日」

「もしよかったらだけどね。嫌なら、別の日でも、パンデモニウムさんが好きな日にするとかね」


パンデモニウムは何度も首を横に振った。完全にフィルターのかかっている新八にとっては、パンデモニウムの何気ないしぐさも可愛く見えてしまう。
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