書庫(蜃気楼)
□弟が男になった時、姉は女になる?
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神楽は現実を受け入れ、晴太を見つめる。自分にとって、晴太は弟のような存在と思っていた。
「どうかした?」
「い、いや、何だか気恥ずかしいなあと思って」
「照れてんの?神楽ちゃん」
「な、何で私が照れなきゃいけないアルカ!?私は普通にしてるアル」
「か〜わいぃ、神楽ちゃん」
「晴太、いい加減にしないと、ブッ飛ばすゾ」
「はは、ゴメンゴメン」
(やばい。何をドキドキしてるアル、私は。晴太に私がドキドキしてる?んなわきゃないアル。あ、そうだ。きっと、胸が大きくなったからネ。胸が大きくなると、ドキドキしっぱなしになるんだ、きっと)
弟として見ていた晴太に、神楽は男を感じていた。意識すると、胸の高鳴りが大きくなっていく。今にも胸が服から飛び出ると思うほどに。
「ねえ、神楽ちゃん」
「え、何アルカ?」
「顔、赤いよ。どうかしたの?熱でもある?」
「熱?ないアル。全然問題ないアル」
心配そうな表情を浮かべた晴太は、自分の額を神楽の額へと重ねた。息遣いが伝わりそうなくらい、晴太の顔との距離が近い。
(顔から火が出そうアル。ドキドキ、止まらないネ。どうしたらいいアルカ?)
「熱はないみたいだね。何だろう、どっかおかしいのかな?」
晴太は、しばし額を重ね合わせ、神楽に熱がないのを確かめて顔を離した。
神楽は自分の気持ちをどうしたらいいのか、わからなくなった。
そこへ晴太が再び顔を近づける。神楽の耳元で、晴太は囁くように言った。
「神楽ちゃん。オイラの事、好き?」
晴太に耳元で囁かれ、ピクンと神楽は体を強張らせた。晴太の言葉が、神楽の身体中を駆け巡る。
「私は、晴太の事、好きアル」
「それって、どういう意味での好き?」
「弟みたいな意味での好きアル」
「オイラも神楽ちゃんの事が好きだよ。でも、オイラの好きはさ」
晴太は、神楽の耳たぶを軽く甘噛みして言った。
「男と女としての好き、なんだよ」
「え、晴太、冗談は止めるヨロシ。私をからかってんなら、そこまでにしろヨ。今なら、笑って済ませて終わりにするカラ」
「じゃあ、これなら信じてくれる?」
「え、晴・・・」
晴太は神楽に向き直ると、彼女の唇と自分の唇を重ねた。あっという間の出来事で、神楽は目を見開いたまま固まっていた。