書庫(蜃気楼)

□あなたに恋い焦がれ
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「あれ、ここはどこだ?全然見覚えがないな、誰もいないし」

「新八様!」

「うん、あなたは・・・パンデモニウムさん!どうしてあなたが」


新八の目の前にパンデモニウムが現れた。久しぶりの再会に、新八の心は躍った。パンデモニウムはあの時と同じように、顔のみ美少女の姿であった。


「どうして?もう会えないって思っていたのに」

「私も、そう思っていたの。でも、あれからもずっと、私は新八様のことを想っていたわ。そして、こうしてまた会えた。それがすごく嬉しいの」

「僕もだよ。僕がもっと早くパンデモニウムさんを何とかしていたら。でも、僕にはあなたを食べることなんてできなかった」

「私は食べられることを運命付けられていた。決められた運命の中で、私は自分の望む結末がほしかった。だから、私はあなたに食べられたかった。あなたの口内に入り、もぐもぐとあなたの口に激しく犯されて、食道を通って、胃液でイカされて、あなたの中に残りたかった」

「な、何だか、卑猥な事になってるけど、食べられたいってことだよね。いや、何だか、ものを食べることがイヤらしく思えてきたんだけど」


パンデモニウムは顔を赤らめている。わずかの時間、しかもデスマッチという異様な状況で、一人と一匹はしっかり心を通わせていた。


「新八様?どうかされました?何だか考え込んでるみたい」

「え、ああ、ごめんなさい。あなたに再会できたのが信じられなくて、あれこれと考えてしまって」

「私も、信じられなくて。嬉しい、新八様にそう言われて。でも、本当に新八様に食べられたかった」


その後、パンデモニウムは黙り込んだ。新八は心配そうにパンデモニウムを見つめる。パンデモニウムは意を決して、口を開いた。


「し、し、新八様っ!」

「何?パンデモニウムさん」

「ああ、あのね。新八様、私を…食・べ・て。キャッ、言っちゃった。本当に言っちゃった」


新八はしばらく思考停止状態に陥った。頭の中はチュンチュンと小鳥がさえずっていた。そして、パンデモニウムの“私を食・べ・て”という言葉がリピート再生を繰り返していた。


「パ、パンデモニウムさん。あなたって、あなたって」

「新八様?どうかしたの。嫌だった?」

「いやいやいや、そんな事ないよ。嬉しいよ、あなたに言われたこと。何だか、胸がドキドキしちゃって、苦しいんだ」

「私も同じよ。胸がドキドキしてきちゃって。あなたにときめいてしまっている自分がいるの」
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