書庫(長編) 第二巻

□其ノ弐参
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銀時は朝日の光に目を覚ました。左胸に激痛は走ったが、その他は問題なかった。


「ここは、どこだ?」


辺りを見回してみる。見覚えのあるところだと、銀時は思った。しばらくして、自分の部屋であると認識した。

いつの間に天紋嶺へ戻ってきたのだろう。記憶をたどってみる。確か、矢を二本受けて・・・思い出せなかった。銀時は、自ら矢を引き抜いて錐ン痔と廉敦に矢を投げ返したことを覚えていなかった。

銀時が視線を下にやると、月詠が寝息を立てて傍で眠っている。

銀時はまじまじと月詠の寝姿を見つめていた。


「いや、まあ、おとなしくしてりゃあ、可愛いと言えなくもねえか。にしても、傍にいてくれたんか。散々な目に遭ったしな」


月詠が、がばっと目を覚まし、ぼーっとした面持ちで眠い目をこすっている。しばらくして、意識もしっかりしてきた。


「おう、おはようさん」

「銀時、銀時、目を覚ましたんじゃな」

「気がつけば、ここにいたって感じだな。痛えぇ、やっぱり痛むわ。あの野郎、ぶっとすぎんだよ」

「まずはよかった。腹は減っておらぬか?」

「ん?ああ、減ったかもしれねえな。記憶が矢を受けてから、スッポリ抜けちまったみてえ」

「わかりんした。すぐに用意させるゆえ、待ちなんし」


月詠は部屋を出た。しばらく歩くと、小耶太に出くわした。


「どげなじゃ?」

「ああ、たった今、目を覚ました。腹が減ったと言うんで、食事の用意をさせようと思ってな」

「そうか、よかった。まずはひと安心じゃな。あとは調子を戻してくれりゃあ、万々歳じゃが」

「そううまくは運ばぬ。まずは体調を戻すところからじゃ」

「はは、そうじゃった。焦っておるようじゃ、気が急いてしまって」

「どうじゃった?敵の情勢は」


小耶太は浮かない表情をした。


「まあ、こちらに攻め込むいうんはなかった。主に装備の点検じゃ。どうやら、天人どもから奪った武器は、なかなかに使えるけえ、色々と見ておった」

「にしては、浮かぬ顔をしておるが」

「天人らは、あれから元の位置に戻った。陣地も取られ、元の木阿弥じゃ。戦いの詳細がわからんけえ、何とも言えぬが」


小耶太の浮かない表情を見て、月詠は先の戦いでどれだけの痛手を被ったかをおぼろげではあるが悟った。そして、これからの情勢は悲観的にならざるを得ない。そう考えた。


「小耶太、頼みがあるんじゃが」

「ほう、何じゃ」

「広場に皆を集めてほしいんじゃ。そこで話しておかねばならぬことがありんす。頼む、小耶太」

「ふ〜む。よくはわからんが、ええよ。今のとこ、天人らに動きはないし。気を引き締めるいう意味でも、ええかもしれん」


小耶太は了承し、隊士らに集まるようにと伝えた。
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