書庫(長編) 第二巻
□其ノ弐参
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隊士らは広場に集まった。そこへ小耶太と月詠が現れた。
「ほいじゃ、最初はわしからじゃ。そのあとに、つくちゃんが言えばええ」
月詠はコクンと頷いた。集まった隊士らを前に、小耶太が口を開く。
「先の戦い、まだ詳しいことはわかっちょらん。けんど、大負けしたのは確かじゃ」
隊士らはざわついた。負けたことはわかっていたものの、どれほどの負けであるのか、まったく見当もつかなかったからだ。
「天人らも腕利きの奴らを再び呼び寄せたみたいじゃし、厳しい戦いになるのは間違いない。じゃが、わしらは戦わにゃあならん。これまで以上に気を引き締め、戦いに臨んでくれ。ええか!」
隊士らは、おお!と返事を返した。そして、小耶太に変わって、月詠が話を始める。
「こういう形で喋るは初めてでありんすが。まずは、隊長の話じゃが、今朝になって目を覚ました。しかし、その身に受けた傷は深い。しばらくは戦いに出てはこれぬ」
月詠の言葉に、隊士らは動揺した。無理もない、攘夷派の象徴である銀時の姿があるとないでは、士気の高さにも影響するからだった。
月詠もこの点は十分に承知していた。しかし、いずれはわかることであるし、隠してバレたときの動揺の大きさを考えれば、今の段階で言ったほうがよい。月詠はそう考えた。
「そして、先の戦いにおいて、わっちは皆に詫びねばならぬ。わっちが早期の撤退を進言し、撤退路の選択も行った。しかし、結果は伏兵に襲われ、多くの死者、隊長をはじめ、多くの負傷者を出してしまいんした。これはすべて、わっちの責任でありんす」
月詠は両ひざをつき、両手を前に置いた。
「このようなことをして、購えるわけではないことは重々承知しておりんす。じゃが、言わねば気がすまぬ。こたびの損害、非はすべてわっちにありんす。申し訳なかった!」
月詠は深々と頭を下げて土下座をした。ざわざわと隊士らは騒ぎ出す。
「皆に色々な感情があるのはわかっておる。じゃが、敵は待ってはくれぬ。これより先は、よく考えて進むべき道を進言させてもらう。そして、わっちは副長より仕事を仰せつかった」
月詠は頭を下げたまま、言葉を続ける。
「隊長・坂田銀時の介助及び復活のための補助でありんす。わっちはこの仕事を完遂し、隊長を万全の状態で復活させる。それが、死んでいった者たちへの、せめてもの償いと思う」
月詠はゆっくりと頭を上げた。両手を腿に置き、背筋を伸ばして、しっかりと前方を見据えながら、月詠は声を張り上げ、大音声で高らかに宣言する。
「わっちはここに約束する。必ずや隊長の傷を完治させ、再び我ら雷刃隊の皆と共に戦うことを。雷刃隊は負けたままではおらぬ。借りは何倍にもして、天人どもに叩きつけてやろうではないかっ!!!」
隊士の一人が咆哮するように叫ぶ。それをきっかけに集まった隊士らは、次々と叫んだ。それは天紋嶺そのものが叫んでいるかのようだった。
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