書庫(長編) 第二巻
□其ノ捌
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ヘッドライトの数が増えていく。確かに前回とは比較にならない数でありんした。その光がわっちらを照らし出す。
「よう、今度は容赦しねえぞ」
「ご苦労なことでありんすな。わっちらはそんなに暇ではありんせん。手短にしてもらいたいんじゃが」
「言いたいことはそれだけか?答えはいつもと変わらぬと言うに。答えは否!じゃ。さっさと帰って寝るがよい」
「期待通りの答え、どうもありがとう。さあて、じゃあやることは一つだ。やれ、お前ら・・・って、ぶ!」
わっちは先手を採って、木の小太刀を打ち込んだ。相手はもんどりうって倒れる。
「これ以上の話は無用。ただ、力をもって語るしかあるまい。なあ、これでぬしらが負ければ、もうわっちらに手出しはするでなし。でなくば、ぬしらの醜態、さらに広がることになりんす」
相手はいきり立って、飛び出していく。わっちは先手を取り、相手の平常心を失わせることにある。そして、総長であるわっちが先頭に立てば後の者たちも続きやすくなる。
「総長に遅れるな!続けえ」
「今日こそ泣かせてやれ!思う存分になあ、やってやれ」
たちまち、あちこちで闘いが起こっていく。とはいえ、わっちらは圧倒的に不利である。じゃから、極端に戦線を拡大するのは望ましくない。わっちらは場所を利用し、囲まれるのを避ける。
集会場周辺はわっちらは十分に熟知しておる。ゆえに一人にはならず、2〜3人で戦う。これは常日頃より言い聞かせたことでありんす。
「ぬしら、ご苦労でありんした」
「げあっぱあっ!」
「総長、勝っています。このままなら勝てます」
「気を抜くでなし。このままうまくいくなどない!欲は捨てて、目の前の敵に当たるんじゃ」
順調すぎるほどうまくいっていた。これならば、勝ちが見えてくる。わっちらは十分すぎるほどに戦っておりんした。
「くうっ!あいつら、何であんな強いんだよ。せっかくの大人数が活かされてねえ」
「何としても勝つんだ。じゃねえと、俺たちは笑い者になって、この街で大手を振って歩けねえ」
相手は相手で必死でありんした。前回引いた際に、相当の侮蔑を受けたらしい。まあ、わっちらには関わりないんじゃが。
わっちらは色々な策を講じてきた。しかし、それを凌駕するものがある。それは人数の差。倒しても倒しても、尽きることなく現れる。
それに、認めたくはないが、男と女の力の差も徐々に現れてきた。こちらは体力を消耗しているにもかかわらず、向こうは次々と新手が現れてくる。戦いは、わっちらにとって苦しいものへと変わっていく。