書庫(長編) 第二巻
□其ノ玖
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突如現れた“万事のGINCHAN”。顔の下半分をバンダナで隠してはいるものの、わっちには見覚えのある人物に思えた。
「オイ、何をしとるんじゃ?銀時」
「銀時?誰それ、うまいの?俺は万事のGINCHANであって、それ以上も、それ以外もない」
「どんな三文芝居をしておりんす。わっちらは今」
「知ってんよ。ある奴から、意地っ張りのバカどもを助けてこいってよ」
万事のGINCHANは、わっちとの話もそこそこに、相手のリーダー格らに対して口を開く。
「オイ、そこのバカヤロウ。お前らよけろ。ボスキャラ見えねえじゃんよ」
万事のGINCHANは、リーダー格の姿を認めると、言葉を続けた。
「何度も何度もご苦労だな。レディース相手によってたかって。良心が邪魔しませんか?コノヤロー」
「こいつらが傘下に入らねえからだ」
「こんなバカな事してるとこに誰が入んだよ?話にもならねえ。こいつら、お前らのとこ入ると、バカがうつるから入りたくないんだって」
「て、てめえ」
「それにだ。バカなてめえらに、万事のGINCHANからのアドバイスだ」
万事のGINCHANは、右手に持った木刀を突きつけて言った。
「女は殴って弄ぶるモンじゃねえ、女はなぁ、愛して守るモンだろが。男であれば」
答えに窮した相手側は、わっちらに向かって殺到してきた。平然とこれを見つめた万事のGINCHANは、木刀を握り直してひと呼吸する。
「バカには荒療治だな。我慢しろよ!」
万事のGINCHANは、殴りかかる相手にカウンターの膝蹴りを見舞う。万事のGINCHANの前にうずくまる男を踏みつけて、さらに挑発するように言った。
「オイオイ、出迎え準備は出来てんだぞ。さっさと来いよ。来ねえなら、俺から出向くぞ」
万事のGINCHANは、人の波に自ら飛び込むと、縦横無尽に暴れまわる。
「オラオラオラオラ!群れねえとダメなんか、情けねえ!もっと気合い入れろや」
木刀の動きが早すぎて、わっちには全ての動きが見えなんだ。近くで戦う者には、鬼神にも阿修羅にも劣らないと感じておろう。それほど、万事のGINCHANの戦いぶりは凄まじかった。
しばし、わっちらは唖然として、この光景を見ているしかなかった。
「すごい、まるで強さの次元が違う」
「見ておる場合か!わっちらも戦うんじゃ」
わっちらも攻撃を再開する。士気が上がったわっちらは、受けた痛みを忘れて、相手に向かっていく。
万事のGINCHANの登場と、その戦いぶりは大きく状況を一変させた。わっちらの士気は上がり、相手は徐々に押されつつあった。