書庫(長編) 第二巻

□其ノ玖
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万事のGINCHANを止められる者はいなかった。時折、攻撃を受けるものの、その後、何倍もの反撃を食らって沈黙する。

自暴自棄になったか、相手側の一人が万事のGINCHANに突進する。それを見た万事のGINCHANは、体を沈めて相手の腿を抱えて、一気に体を起こした。

宙を飛んだ男は、地面に激しく叩きつけられる。何とかして倒さなければならない。前後から一気に襲いかかるが、後ろに肘打ちを食らわせ、素早く相手の後ろに回ると、思いきり木刀を横に振り抜いた。

痛撃を受けた相手は、前へと飛んでいく。前にいた者とぶつかって、前後不覚になったところを叩く。


「はいはい、少なくなってきたな。見えてきたよ、お山の大将連中が」


明らかにリーダー格の顔色が変わった。焦りの色が強くなっておるのじゃろう。指示を出す回数が明らかに多くなった。


「オイ、万事のGINCHAN」

「あ、何だよ?」

「リーダー格は、わっちらがやる。でなくば、意味がない。ぬしの助けはありがたいが、リーダー格の奴らは百華がやる」

「勝手にしろ。こっちはこっちでやるからよ」

「わかりんした。囲みはもはや、ないに等しい。一直線に敵の頭を取りに行く!」


すぐさま、百華のメンバーは、応と答えた。相手側はどんどん数を減らしていく。ついにはっきりと目にした。距離が縮まる。後ろへじりじりと退こうとしているのを見て、わっちは呼び止めた。


「待ちなんし!仮にもチームを統べる者であろうが。ここに至ったならば、前へと進め。臆病者、卑怯者と言われたくなければな」


奴らは踏み止まった。しかし、万事のGINCHANは恐ろしいのか、これを避けて、わっちらの方に向かっていった。万事のGINCHANは、これを横目に見ながら目の前の敵と対していた。


「さて、決着をつけようか?最初から、こうしていればよかった。そうすれば、あっさりと雌雄は決していた」

「ナメンじゃねえぞ。お前なんぞに負けるわけ」

「もう、随分とナメられておりんす。まあ、わっちに敗れて恥の上塗りでありんすが」


男たちは、わっちに向かって殺到する。相手は数人じゃが、わっちには負けることなど露ほども思っていなかった。

殴りかかってきた相手を、回りながら回避し、延髄に回し蹴りを放つ。殴りかかる拳を受けとめ、木の小太刀をみぞおちに打ち込んだ。相手は悶絶のあまり、その場にうずくまる。


「こんな感じじゃ。次はおらんかえ?」

「て、てめえ」

「“紫紺の死神太夫”の名は飾りではありんせん。さあて、もう面倒じゃ。一度に来なんし、終わりにしようではないか」

「く、くそっ!」


相手は頭に血が昇り、冷静さを欠いておる。そのような者たちなどは造作もなかった。

怒りによる攻撃ほど、読みやすいものはない。しかも、その力は、わっちの想定の範囲内でありんした。

避けて、返しに打ち込む。その繰り返しじゃった。最後の相手は多少手強かったが、立とうとして片膝をついたところへ、それを踏み台にして膝蹴りを側頭部に当てた。

これで勝負あった。倒れた者と立っている者。勝負の勝敗は明らかでありんした。
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