書庫(長編) 第二巻

□其ノ玖
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倒れているリーダー格数人をわっちらは取り囲んだ。その他は逃げるか、わっちらと万事のGINCHANにやられて倒れている。


「ぬしら、これで分かったであろう。わっちらはどこにも属さぬ。これ以上、わっちらに手出しをするな。でなくば、わっちらにも考えがありんす」

「なっ、何を?」

「噂は早い。おそらく、この結果はすぐに広がるじゃろう。それに当事者のわっちらが尾ひれをつけたらどうなる?」

「総長、持ってきました。では、さっそく」


わっちは倒れている相手のリーダー格の写真を撮った。何枚も何枚も撮っていく。抵抗しようにも力が入らず、されるがままでありんした。


「これをばらまくことになる。さすれば、この街で意気がる事は無理でありんしょう?」

「き、汚ねえ」

「汚い?黙りんす!わっちらはぬしらに恨みなどはない。降りかかった火の粉を払っただけじゃ。あとは、まいりましたと言いなんし」

「はっ、誰が!」

「ならば、渡ってみるか?三途の川を。渡し賃はわっちらが払ってやりんす」


わっちらはそう言って、戦闘態勢をとる。じりじりと囲みを狭めていく。相手側は恐れをなし、見栄も外聞もかなぐり捨てた。

よろよろと体を起こし、土下座の体勢をとり、頭を擦り付けて言った。


「ま、まいりました。これ以上は関わりません。あんたらの勝ちです」


パシャリッ!シャッター音が聞こえた。


「あんたらじゃねえだろ、何、対等ぶってんだコノヤロー!私たちは、あなた様方には足下にも及ばないクソミソ野郎でございますだろが」


万事のGINCHANの仕業であった。仕方なく、相手は万事のGINCHANの言う通りの口上を述べた。

やがて、相手側はゆっくりと去っていく。これの姿が見えなくなるまで、わっちらは気を張っていた。見えなくなると、バタンとその場に座り込んだ。中には、今ごろになって痛みを感じる者もいた。


「じゃあな、俺はこのへんで」

「ま、待ちなんし!蓮華、怪我の手当てを頼む。わっちは恩人を見送ってくるゆえ」

「いいよ、怪我人多いんだから」

「それでは、わっちの気がすまぬ!」


半ば強引に、わっちは万事のGINCHANを見送る。


「こたびは助力してもらい、礼を言う。ありがとうな銀時」

「は?俺は万事のGINCHANって何度言えば」

「リーゼントが乱れて、髪が立っておりんす。その髪の毛で、見事な天然パーマをしておるは坂田銀時くらいのものじゃ。違うかえ?」

「・・・・・・知らねえよ、そんな奴」


あくまで否定するこの男に、わっちは笑いを禁じ得なかった。


「とにかくだ、俺は銀時って奴とは無関係だからな。笑ってんじゃねえ」

「わ、わかったわかった!すまぬな、許してくんなんし」

「あ、ここらへんでいい。お前は仲間のとこへ戻れよ」

「ありがとう。おかげで九死に一生を得た」

「まあ、これで奴らも懲りたろうしな。少しは楽になるだろうからよ」

「わかりんした。では、これで」

「じゃあな」


万事のGINCHANは、ゆっくりと立ち去っていく。その姿が消えるまで、わっちは見つめ続けた。その後ろ姿に、わっちは心が熱くなっているのを感じた。その熱はまだ微かなものであったが、確かに今までにない感情でありんした。


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