書庫(長編) 第二巻
□其ノ拾弐
1ページ/4ページ
坂田銀時の容態は、数日変わりがなかった。わっちは何度か様子を見に行っていた。
銀時は目を覚ましてはいなかった。わっちは見つめていた。銀時が目を覚ましてくれることを期待して。
「銀時、もう十分に寝たでありんしょ?そろそろ、目を覚ましてくんなんし」
「・・・」
銀時はまだ目を覚まさない。命には別状ないというが、傷だらけという状態では五体満足で退院できるか分からない。
もしかしたら・・・銀時はこのまま目を覚まさないかもしれない。わっちは最悪の事態を予想した。
医師からの話もよいものとは言えなかった。
「大丈夫だとは思うけど、以前のようにはいかないかもしれない。それだけ、怪我の具合は深刻だからね。月並みではあるが、本人次第という他はないな」
「そう・・・ですか」
わっちは陰鬱な気持ちで病院を後にする。
それから数日後、銀時の意識が回復したとの知らせを受けた。わっちは急いで、集中治療室に駆け込んだ。そこには起き上がって、ぼんやりと辺りを見ている銀時の姿があった。
「お、お前か。何か久しぶりだな。ほれ、見てみろよ。包帯やら何やらで、銀さんミイラ状態よ」
「ぬし、五日もずっと寝ておったんじゃぞ。体の方は大丈夫か?」
「これ見りゃ、全然まだだろよ。しばらく安静にしてろって。暇でたまんねえわ」
「そう言うでなし。しっかり体を治すためじゃ」
銀時はため息の後、思い出したように話題を変えてきた。
「そういや、病院まで付き添ったらしいじゃん。ありがとよ、まあ、そこらへんの記憶がないんだけど」
「ぬしが倒れておるのを、大橋の上から見かけたんじゃ。その髪の色ゆえ、もしやと思うたが」
「いやあ、あまりにやられすぎて死んじまうかなって思ったけどな。運がよかったんだなあ、あはは」
「あははではありんせん!ぬし、しばらく意識がなかったんじゃぞ!いったい、何があったんじゃ?」
「大告白大会」
「はあ?」
「俺って、めちゃめちゃモテルらしいんだわ。呼び出されて、数十人、いや百人くらいはいたかな?まあ、けっこうな奴らから、猛烈なラブコールをもらったわけよ」
自嘲気味な笑みを交え、そううそぶく銀時を、わっちは何と言うたらいいか、わからなんだ。
「まいったぜ、多分、西高とかどうなってんだろな。行ったらメチャクチャになってんだろな」
「ぬしは西高の番でありんしょ?心配することはないじゃろ」
「俺はそうは思ってねえ。まあ、一人でいるのが基本だからな。どっかの傘下とかになってんだろ」
わっちに出来ることはないか。銀時の状態を見つめながら考えていた。