書庫(長編) 第二巻
□其ノ拾弐
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「まずは体をしっかりと治すことじゃ。かなりひどい怪我なんじゃ。わっちもまた来るし、何かあれば言いなんし」
「何か悪いな」
「ぬしを病院に連れていったはわっちじゃ。わっちが出来うることはしてやりんす。治ってくれねば、わっちもバツが悪いでの」
わっちの言葉を聞いて折るのか、聞いておらぬのか、銀時は少し上の方を見上げておった。
「どうかしたか?」
「ん、ああ、何でもねえ。いや、俺にはけっこう重要なことかもしれねえけど」
「何じゃ、言ってみなんし。気にかかったものがあったままでは、治りも悪くなってしまいんす」
わっちの言葉に、銀時は思案している様子じゃった。しばしの時間を置いて、銀時は口を開いた。
「病院食は味気ねえし、売店はそんなにいいモン置いてねえからなあ。銀さん、こんな生活に耐えられるかどうか」
真剣味を帯びて、そんな事を言うものじゃから、わっちは思わず吹き出して、笑ってしまいんした。
「くくっ、くくくくく」
「何がおかしいだよ。これはかなり真剣な問題だよ?銀さんの根幹にかかわる問題だもの」
「ははは、わかった、わかりんした。じゃから、わっちをこれ以上、笑わすでなし」
「いや、笑わせてるつもりないからね。銀さん、真剣に言ってるんだからね」
「わかった、度が過ぎる甘味は無理じゃが、持ってきてやりんす。少しくらいなら、よいかもしれぬし。それでよいか?」
「文句なし!その方向で」
「わかりんした。あまり食いすぎは良くはないから、わっちが食べる量は決めさせてもらいんす」
銀時は口をとがらせて、不満だと言わんばかりのアピールを始めたが、わっちはあえてのスルーを決め込んだ。
「あ〜あ、学校行ったらどうなんだろうなあ。何ともいえんなあ」
銀時は呟くように言った。
そんな中、西高は銀時が心配していたとおりになっていた。銀時がやられたという報は、あっという間に伝わった。他校はこれ幸いと西高に圧力を加えてきた。西高は“坂田銀時”という存在が突出して大きく、その他の存在は右往左往するばかりであった。
西高は二つの意見に分かれ、不毛な争いが始まった。銀時が戻ってくるまで、現状を維持しようという意見と、他校の傘下に入って安定を得ようという意見である。
「散々、銀時さんに世話になっておきながら、その敵討ちもやらずに言いなりになれっか!」
「アイツが目立ってたから、西高がうっとうしがられたんだろ!アイツのせいで面倒なことになるんなら、こっちが折れて穏便に済ませりゃいいだろ」
このような具合で、西高はゴタゴタ状態にあり、銀時を迎え入れる状況ではなかった。