書庫(長編) 第二巻

□其ノ伍
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一方、綾人は、とある建物内に数人の男たちと話し込んでいた。


「そろそろ、手を変えるか」

「え、それは何で?」

「邪魔が入った。変態オカマがな」

「はあ」

「とはいえ、百華の面々はなかなかに強いからな。お前ら程度なら、普通に撃退できるだろう。ここはまた俺かな?」

「今度はどのような手を?」

「まあ、今までは一瞬の苦しみだった。だが、今度は精神的に苦しめさせる」

「それは?」

「お前らは知らなくていい。いつもと変わりなく、吉原を歩いていればいい」


集まりを散会させたあと、綾人は変態エックス(銀時)との戦いを思い出していた。ただの作業のつもりであったのに、久々に綾人の血を沸き立たせるほどの戦いを。


「はは、何ともすげえ男だった。まだまだ引き出しはありそうだな」


久しぶりの斬り結ぶという感覚。“殺す”から“戦う”へ、意味合いが大きく違っていた。銀時との戦いは、綾人の心に火を点けたようだった。


「忘れていたからな、あんな感覚。反撃されるってのも久しくなかったし。はは、本分を忘れそうになった」


綾人はニヤニヤと笑みが絶えなかった。


「でも、ここで忘れるか。本分は忘れちゃいけないわな。やらないといけない事は、別なんだし」


綾人は笑みを止めた。眼光鋭く前方を見据え、思考を切り換える。そして、次への一手を考えていた。


「さぁて、どうしようもないほどの苦痛、味わってもらわんとな」


一週間後、深夜の吉原界隈。店の灯りも消え、百華の者たちが見回りを行っていた。

そこへ顔半分を布で隠した男が現れた。身構える百華の者たち。


「何者だ!」

「はは、先だっての殺害事件を起こした者だけど」

「なっ!」


百華の者たちは、素早く苦無を綾人に向けて投げつける。綾人は苦もなく、これを菊池槍を回転させて弾き返す。


「少しは、腕を上げたかな?安心しろ。殺しはしない」


綾人は菊池槍を素早く突いていく。はらりと百華の者の顔を覆っている布が取り払われる。

綾人は百華の者たちを物色するように上から下へと見回した。そして、綾人は言った。


「決めた!お前」


百華の者たちが、綾人の言葉を解りかねてる最中、一気に綾人は間合いを詰める。

身構える間もなく、綾人は菊池槍の柄を思い切り左側の百華の者に打ち付ける。無防備状態で打ち付けられた百華の者は、気を失ってその場に倒れた。

間を空けず、綾人は反対側の柄を、もう一人の百華の者のみぞおちに突き立てた。前のめりになったところを、首筋を狙って手刀を打ち込む。これで、もう一人の者も気絶した。

綾人はこれを肩に抱えて、悠然と歩いていく。わずかな時間で、綾人は二人の百華の者を戦闘不能にさせ、一人を連れ去っていった。

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