書庫(長編) 第二巻

□其ノ拾参
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坂田銀時は、その後順調に回復しておった。体が強健であったことが幸いしていたんじゃろうとのことだった。


「ずっと病院で閉じ込められてっと、気が狂いそうになるぜ」

「仕方ないじゃろ。ケガを治すためなんじゃし、その証拠に体はもう少しで完治すると言っておったから、もう少しの辛抱じゃ」

「あれも食いてえ、これも食いてえ、何とかなんねえかよ」

「じゃから、退院したらあれもこれも存分に食べれるじゃろうが。文句言わず、ケガを治せ」


文句を言いつつも、銀時はケガの回復に努めた。途中、一晩寝たらHP回復するみたく全快しないかと訳の分からないことを言っていたが。

そして、銀時は無事に退院することになった。通常より早く退院となったことに、医者も驚いておった。


「やっと解放されたぜ。長かった〜」

「医者も驚いておった。信じられないという顔をしておりんした」

「病院に箱ずめなんて、性に合わねえからな。そりゃおとなしくしてたんだもの」

「とはいえ、しばらくは安静にとのことじゃ。暴れて痛みがぶり返してこないように気をつけなんし」

「あいよ、じゃあな。あ、あのよ」

「ん?」

「ありがとよ、世話になっちまって」

「ぬしには色々と借りがあるからの。それを返したと思えばよい。気にするな」

「そっか、あとよ」

「今度は何じゃ?」

「いつだったか、ある夜に顔に柔かい感触があったような気がしてさ」

「は?柔かい感触?」

「ああ、何かポヨンってな感じでさ。妙に感触がよくて覚えてんだわ」

「そうか、それをわっちに言って何とする。今の話にわっちがコメントする余地はどこにもないが」

「別にお前がどうこうって話じゃないだろ。そんな感触があったなって」

「そう、じゃな。で、どうじゃった?」

「どうじゃったって、何が?」

「そんな体験に出くわして、その、なんだ、まあ、ぬし的にはどうであったかと聞いておる」

「そう、だなあ。悪くはないな。柔かくて、それでいて弾力があって。いいポヨポヨ加減だったわ。心地よくて。あ、それじゃあ、俺は行くから。じゃあ、またな」

「ああ、体には気をつけるんじゃぞ。無理はせぬように」


銀時は手を振りながら歩いていった。わっちに振り向きもせず、まっすぐに進んでいった。

わっちは気恥ずかしかった。もしかすれば、銀時はあの時、気がついていたのではなかったかと。恥ずかしい、あの時のわっちは何故にあんな事をしてしまったのかと問い直したい。悶々とした気持ちで、わっちは銀時を見送っておりんした。
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