書庫(長編) 第二巻

□其ノ拾参
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しばらく銀時はおとなしく学校生活を過ごしていた。周囲の者らは腫れ物に触るかのように銀時に接していた。銀時自身、学校生活にさほどの支障は感じなかった。

屋上にいた銀時に、数人の者らが接触してきた。彼らもまた、銀時が西高の番をしていたときにはその下についていた者たちであった。


「坂田さん、俺らはあんたが立ち上がってくれるって信じてます。機会を見て、西高を牛耳っているヤツらをぶっとばして」

「ワリいけど、そういう話はなしな。俺はおとなしく生きていくことに決めたんだわ。俺がおとなしくしてりゃあ、何もしねえみてえだし、このままつつがなく過ごすことにするわ」

「何言ってんですか、らしくねえっすよ。やりかえさないんですか?」

「お前らは数十人、いや百くらいかな?それに一人で対したことあんのかよ?ねえだろ?俺はホント死ぬかと思ったんだわ。あんな思いすんなら、おとなしくしときゃあいいんだから。あいつらは俺がおとなしくしとけばいいんだからさ」

「本当にそう思ってんですか?」

「お前らだって、あいつらと正面から対することなんてできねえだろ?矢面に立たされたのは俺ばっかだしよ、ちっとはお前らも自分の力でやってみろ。それをやらねえで、人に頼むだけじゃあムシがよすぎるってもんよ」


この言葉に、数人の者らは退いていった。銀時はその姿を目で見送りながら、手に持っていたいちご牛乳に口をつける。


「・・・牙は、抜けちまったか。それとも・・・折れちまったのか」


ぽつりと銀時は口にした。拳をぎゅっと握り締め、銀時は空を見上げる。ふつふつと心の中は燃え滾っていた。しかし、いまひとつ踏ん切りがつかなかった。


「ツッパらなきゃ、ツッパっていかなきゃいけねえ時だろ?今度は負けは許されねえ、今度負けたら終わりだ」


考えていると、手が小刻みに震えていた。やるべきことは決まっていた。自身の誇りを取り戻すために、襲った奴らを倒す。しかし、それを決行する踏ん切りがつかないでいた。消極的になっている自分が情けなく、銀時はやるせなさを感じていた。

それから数日を経た後、銀時は目を見張った。銀時を説得していた者らが、西高を占めている者らに戦いを挑んだのだ。


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