書庫(長編) 第二巻

□其ノ弐陸
1ページ/4ページ



天紋嶺に向かって、楼逵と錐ン痔率いる天人たちは歩を進めていた。森林を分け入り、周囲に注意しながら進む。


「今のところは、伏兵の心配はないようですな」

「油断はするな。劣勢なのを承知で、長く立てこもっている相手だ。む、構えろ」


楼逵は配下の兵に戦闘態勢をとらせる。前方の林から、かすかに音がしたからだ。まずは斥候を出して探らせる。


「ふむ、敵はいないか。しかし、もうすぐ敵地じゃ。まとまって進むべきか、それとも二手に分けて進むべきか」

「二手に進んでは?まとまって進んだとしても、一度に進める人数は限られてきますゆえ」

「それもそうか・・・よし、錐ン痔、ここから二手に分かれようぞ。とはいえ、深入りはするでない。敵の士気を見るくらいと思っておけ」

「承知、ではこれにて」


錐ン痔は楼逵と分かれて、別の道を進んだ。それを見送ってから、楼逵はゆっくりと天紋嶺の内部に侵入していった。

その様子を見下ろしていた一群があった。鳥尾小耶太率いる雷刃隊・先駆け隊である。


「これは強敵じゃの。強そうな気っちゅうのがわかるわ。あの佇まいからして、そうとうな場数を踏んどるな」

「我らには気付いてないようですが、どうしますか?」

「まあ、しばらくは様子見じゃ。焦らんでも、もうすぐやり合う。襲う用意は怠るなよ」


気配を押し殺して、先駆け隊は楼逵らの後を追った。

道がしだいに狭くなっていく。楼逵らは窮屈に思いながら進んでいく。その時、後方から激しい銃声が響き渡る。

伏兵があることは予期していたが、やはり不意を衝かれるのは多少の混乱を引き起こす。一部の兵士が右往左往しはじめていた。楼逵は叱咤し、これを収めようとする。

一方、奇襲をかけた先駆け隊はひとしきり銃撃を加えたのち、小耶太を先頭に、楼逵らに襲いかかった。


「旗を大きくはためかせい!命は天に預けて、目の前の敵をやっつけい!」


雷刃隊の旗が大きく翻る。すぐさま敵味方入り乱れての戦いが始まった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ