書庫(長編) 第二巻
□其ノ弐陸
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小耶太は自分の間合いに楼逵を入れた瞬間、駆け出していた。普通の者からすれば、それは消えたと思ってもおかしくないほどの速さである。
「命に届いたとき、それは物が言えぬ屍になっとらあああぁあぁ!!!」
喉を狙った小耶太の突き、それは楼逵を貫くかに思えた。次の瞬間、小耶太は後方へ大きく吹き飛ばされた。
もんどりうって転がる小耶太。楼逵は手にした大刀を見る。小耶太の突きは、楼逵の大刀によって防がれていた。幅広に造られている楼逵の大刀は、太刀筋を読んでいれば難なく防ぐことが可能であった。
「ぐ、こんなあ、強い」
「先ほどよりも速く、さすがだな」
「くそがっ」
「わしより体格の低いお前がとる手段といえば、選択肢はおのずと限られる。あとはそれに合わせておけばいい。それだけだ」
小耶太は敗北感を感じずにはいられなかった。とはいえ、敵は倒さねばならない。強敵であろうとも、自分たちのやることは変わりない。
落ち着きを取り戻した天人たちが、徐々に本領を発揮しつつある。ここで跳ね返されるては、上にいる銀時らにも危機が迫ることになる。
その頃、坂田銀時と月詠は部屋で休養をとっていた。
「下では戦いが起こっておるな。こちらにまで喚声が聞こえてくるとは、こちらに迫ってきておるのかの?」
「いや、まだ間はある。こっちへ来るには、まだまだ」
戦っている者たちの声が入り乱れて聞こえてくる。命と命をぶつけ、生と死、そのいずれかが目まぐるしく交錯する。その声を聞いて、銀時はなぜか心を急かされたような気がした。そして、体中の血が沸き立ってくる。
体が自然に自身の刀へ向かっていく。月詠はその様を怪訝そうに見つめる。
「月詠、今から打ち合うぞ」
「待て、銀時。まだ怪我は癒えておらぬ」
「死んだら四の五の言えんのか?今だ、今なら戻れる。甘ったれた自分を抜けて、戦場に身を置いていた俺に」
銀時の目がギラリと光り、月詠に相手をするように訴えているかのようだった。月詠はそれに気圧される形で、自身の武器に手をかけた。
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