書庫(長編) 第二巻

□其ノ拾肆
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銀時は相手側の様子を窺った。立とうとしても立てない。そして、歯向かう気も失せたようだった。


「さて、と。お前らの覚悟はわかった。ちょっと相談があるから、来てくれ」


銀時らは、屋上へと上がっていく。集まった者たちに銀時は言った。


「俺をボコったヤツラの詳細を調べてくれ。名前、住所、行動パターン、何でもいい。とにかく手がかりを見つけてくれ」

「わかりました。あとは何かありますか?」

「あとは俺がケリをつける。お前らには迷惑かけねえから」

「ちょっ、銀時さん。水くさいこと言わないでくださいよ」

「そうっすよ、俺らも覚悟決めてるんすから」

「俺が見境なく暴れたら、お前らを庇いきれねえ。お前らのことなど、お構い無しで暴れちまう。だから、一緒に戦えとは言えねえんだ。それに、お前らの仕事は楽じゃねえぞ。怪しまれてやられちまうこともある。だから、まずは自分の身は自分で守ってくれよ。それだけでも、俺には過ぎた加勢なんだからよ」

「銀時さん、わかりました。うちらはまず、銀時さんをヤッたヤツラを全部洗い出します」

「まあ、急がなくていい。全員のヤツが出揃ってから、俺は動く」


その後、一人で銀時は屋上にいた。踏み出すことはできた。後は自分を取り戻すだけ。


「いや、それだけじゃあ足りねえ。取り戻したところで、それはボコられて終わった俺なだけ。超えなきゃならねえ、あのときの俺よりも、強く!」


それから二ヶ月の時が流れた。銀時は表立って、西高に絡むことはなかった。しかし、その影響力は無視できないものだった。今、西高を牛耳っている一派も銀時らを放置していた。

屋上でぼんやりと空を見上げる銀時に、仲間たちがやってきた。

この二ヶ月、彼らは銀時の指示通り、襲撃した者らの詳細を調べていた。ところどころに傷が見えるのは、調べている最中に怪しんだ者らによるものだった。彼らも命がけだったのてある。


「ありがとうな。大変なことさせちまって」

「お礼はあとで!とにかく、これをまず見てください。にしても、ホントにこれ、銀時さん一人が?」

「知るか!人数なんてたくさんいたしか」

「西高以外の高校みんな参加してます。100人は下りません」


広げられた資料には、事細かに情報が書き連ねてあった。銀時は一通り目を通し、口を開いた。


「これなら、十分にやれるわ。いや、本当に大変だったな。ありがとよ」


銀時は思わずほくそ笑んだ。これほど多くの恨みを買っていたことを。そして、これから多くの恨みを晴らしていくことを。
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