書庫(記念・企画)

□偽りの中の真実
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「うぃ〜す」

「あら、銀さん。久しぶりね、ずいぶんと顔見せてくれなかったねぇ」

「まあ、色々とあってねぇ、立ち直るまでに時間かかっちまって」

「月詠は見回りだよ」

「まだ、月詠のこと一言も言ってないんだけど」

「ふふ、そうよねえ」


坂田銀時は自らの酒乱が招いた戒めとして、月詠を含めた五人の女性から、きついお仕置きを受けていた。

意外にもそのダメージは深く、銀時が平常を取り戻すまで、かなりの期間を要したのだった。


「まあ、日輪さんの言うとおり、月詠に用事があるんだけども。見回りなら、もう少しで帰ってくるな。じゃあ、あいつの部屋で待たせてもらうわ」


銀時はそう言うと、月詠の部屋へと向かった。その姿を見送りながら、日輪は言った。


「自業自得とはいえ、何だかかわいそうになってくるわ。変なことにならなきゃいいけど・・・まあ、心配はいらないか。二人もいい大人だし」


日輪は気にしないことにした。しばらくして、月詠が『ひのや』に戻ってきた。日輪が月詠を出迎えた。月詠は銀時のブーツを見ると、日輪に尋ねた。


「日輪、銀時が来ておりんすか?」

「ああ、少し前にね。今は、あんたの部屋にいる。あんたに用があるらしいようで」

「そうか」

「銀さんの自業自得とはいえ、少し灸が強すぎたみたいだから。あたしは寝るから。気にするなとは言わないけど、激しいのはちょっと」

「な、なっ、何をじゃ」

「色々とね」


日輪は自分の部屋に引き上げていった。一人残された月詠は、銀時のブーツを見ながら、ふうっと息を漏らした。


「あれ以来、会ってはおらぬからな。さて、どういう顔で会えばよいのやら」


少しばかりの気の重さを感じながら、月詠は部屋に向かった。戸を開けると、銀時があぐらをかいて、自分を待っていた。


「久しぶりじゃの。元気にしておったか?」

「ああ、お陰様でな」


月詠は銀時と向かい合うように座った。しばらく二人は言葉を発しなかった。何と話を切り出していいかわからない。

月詠は銀時の顔を見た。ぶすっとした表情をしていた。月詠はビデオで見た、ドッキリとわかったときの銀時の顔を思い出す。何とも言えない表情は、今でも忘れることができない。

失礼と思いながらも、中から笑いがこみ上げてくる。笑えてくるのを押さえながら、月詠は話しかけた。


「元気そうで何よりじゃな」

「何で笑いを押さえたように言ってんだよ。どこをどうとりゃ、元気に見えるんだよ?」

「こうして、こちらまで来てくれたではないか」


月詠の言葉に、銀時は自嘲の笑みを浮かべた。
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