書庫(記念・企画)

□偽りの中の真実
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銀時の様子に月詠は困惑した。銀時はつらつらと話を始めた。


「確かに、しこたま酒を飲んで暴れたのは、ダメかなと思ってる。聞けば店を壊したみたいだし、申し訳ないなと思うわけ。でもよぉ」

「でも?」

「ドッキリとか仕掛けるのはいかがなものかと。だってよぉ、気がついたときにババァが隣に寝てたときの気持ちがわかりますか?コノヤロー」

「ドッキリを仕掛けたのは、ぬしの行状が改まらぬからじゃ。少しばかり、灸を据えるという」

「愚かなピエロは、仕掛けられたドッキリ世界の中を必死にもがいておりました。あくせくしながら、頑張ってましたよ。それをお前らは・・・」

(いかん、意外と銀時はこういう場合はめんどくさいんじゃった。どうしたらよい?この場合の銀時はまさに駄々っ子。手がつけられぬ)

「まあ、あいつの言うことを全面的に信じちゃった銀さんも銀さんなんですがぁ」

「・・・」


月詠はかける言葉を探していた。完全にやさぐれている。何を言ってもダメな気がする。ここは黙って気が済むまで喋らせるしかない。そう思った。


「お前には色々としてもらったよなぁ。メシ作ってもらったりとかさ」

「ぎ、銀時」

「嬉しかったりしたんだぜ。まあ、メンツがメンツだっただけに、かなりの苦労だったけどな。しかし、その何もかもが虚妄だったとはな。どうせ、心の中で嘲り笑い、せせら笑いながら過ごしてきたんだろ」

「銀時、あれが全て嘘であったのでは」

「聞いたぞ」


銀時はジロッと月詠を睨んだ。その眼光に少し月詠はたじろいだ。


「メス豚に聞いた。お前、本当は罰ゲームできる立場じゃないよな?」

「メス豚・・・猿飛のことか?」

「世話になった方々に、お礼参りツアーやってんだわ。そこで聞いたわけよ。俺と一緒に店内で暴れたらしいじゃねえか」

「そ、それは」

「それは、何だよ?」

「暴れて壊したのに関しては、わっちも弁償したわけじゃし」

「弁償すれば済むんですかぁ?弁償したら、それはなかったことになるんですかぁ?」

「うぅ、それは」


月詠にとっては痛いところを突かれた。猿飛あやめに指摘されて気がついた。我に帰ったときの店内の惨状たるや、それはひどいものだった。

月詠の性格上、銀時以外の罰ゲームは気が咎めた。けれども、これは自分にも課せられたものであると思うことにした。
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