書庫(記念・企画)

□夏ってのはどうしてこんな
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ここはとある中学校。こちらに通う一組の男女、年は14の中二真っ盛り。男の名は坂田銀時、女の名は月詠。物語は夏の暑い日のこと。

夏の暑い日、教室内の温度は30℃を超え、まさに猛暑であった。こんな状態で勉強に身が入るわけはなく、生徒たちは暑さをどうやり過ごすかを考えていた。そんな中、一人の生徒が手を上げた。


「先生ー!ちょっと、めまいがするんで席外してもいいですかぁ」

「ん、坂田か。ああ、かまわん。行ってこい」

「じゃ、行ってきます」


銀時はそう言うと、席を立って教室から出ていく。先生は渋い表情を作った。

坂田銀時という生徒は、決して品行方正な生徒ではない。勉強については熱心というわけではなく、成績はそれに比例して下の方から数えたほうが早かった。

しかし、生徒たちからは妙な人望があった。腕っぷしが強く、危ない目にあった生徒たちを救ったのは一度や二度ではなかった。それゆえに、生徒たちから頼りにされていた。外見や態度のせいで、先生らは苦々しく思っていたが、生徒らの人望厚い銀時を無下にすることもできず、彼を自由にさせている状態であった。

銀時は口笛を吹きつつ、屋上へと上がっていった。屋上の一角に、銀時がいつも寝床等に使っている所があった。色々なとこから物品を持ち寄り、そこである程度生活できるくらいであった。

銀時はソファーに横たわり、眠る態勢になった。銀時の寝床は、自然と日陰になっており、教室にくらべれば随分と涼しかった。

銀時が屋上に寝床を構えているのは、全生徒が周知するところであり、生徒らが屋上に上がってくることはまずない。ゆえに銀時の安眠は約束されたようなものであった。ある例外を除いては。

銀時が深い眠りに落ちかけたその時、頭に痛撃がはしった。何事かと飛び起きると、腕組みをして仁王立ちしている女性がいた。


「何をしておるんじゃ。暑いのは、ぬしだけじゃありんせん。少しは我慢というものを覚えぬか」

「何だ、月詠か」

「何だとは随分な言いぐさじゃの。まったく、ここはぬしの住み処ではないというに」


月詠は誰に対しても、物怖じすることはない。それは銀時に対しても例外ではない。この学校内で、銀時に言うことが言える稀有な存在として、先生、生徒からも一目置かれていた。


「まあ、ぬしに言うたとこで耳タコなのは知っておりんすが」

「なら言わなきゃいいじゃねえか。お前がそれを言うことによって、俺の体感温度が上昇するわけだし」

「わっちとて好きで言うてるわけじゃない。誰も言わぬから、言うておるんじゃ!」

「今、何時?」

「ん?ああ、12時を過ぎたところじゃ。ぬしは授業を切り上げ、さぼっておったからな」

「さぼってねえよ、大冒険の真っ最中だったんだよ。それをお前がたたき起こしたから」


月詠は、はあ、とため息を一つこぼすと銀時をじろりと睨んで言った。


「ぬし、リアルに中二病かなんかじゃな。頭にお花畑でも咲いておるのか?」

「誰が中二病だよ!俺はまとまなこと言ってんだ」

「自分の目からはそうじゃろう。しかし、聞いた者は全員がこう言うじゃろう。『アイツはオカシイ』とな」


ズバリとものを言う月詠に、銀時は恨みがましい視線を送るしかなかった。


「お前はいつもそうだよな。たまには、オブラートに包むというのはねえのかよ?」

「包む必要があるのか?」

「もういいわ。これ以上話してたら、せっかくの時間がもったいない。おい、もうメシ時だろうが。早く戻って食べろ。俺もこれから食うんだから」

「そうか、では、邪魔したな」


月詠は立ち去っていった。銀時はその後ろ姿をぼんやりと見送り、ゴソゴソと弁当を探し始めた。
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