書庫(記念・企画)
□夏ってのはどうしてこんな
3ページ/4ページ
「わ、わりいな」
「急すぎるぞ。ボーッとして箸が止まっておると思えば、今度は急にめしをかきこんで」
「いや、汗が滴って、大丈夫かなあ、なんて」
「仕方ない、暑いのだからな。多少は覚悟の上じゃ。まあ、そんなこともあるかと飲み物を買ってるし」
月詠はペットボトルのフタを開けて、口をつける。銀時はその様子を眺めていた。月詠が飲んでいる様を見て、妙な妄想が頭をよぎる。
月詠はおそらく無自覚であろう。わかってはいるが、銀時にはそれがエロく見えてしまう。飲んでいるときの月詠の表情。汗ばんでいる月詠の体。ツンと上を向く月詠の胸。スカートの下からスラリと伸びた月詠の脚。今、月詠の存在すべてが、銀時を欲情させるに十分であった。
銀時の視線に気づいたのか、月詠はペットボトルを銀時に差し出す。
「ほれ、飲みなんし」
「え?」
「ノドが渇いておるんじゃろ?気がつかなんで、悪かった。早く、飲みなんし。ぬるくなってしまいんす」
差し出されたペットボトルを受け取ると、銀時はそれに口をつける。しばらく飲んだ後、月詠にそれを返した。
「いやあ、とりあえずは助かったぜ。ありがとな」
「こういう時じゃ。気にするでなし」
月詠はペットボトルを受け取り、口をつける。月詠は飲んだあとに、ある事に気がついた。
(ん…?これはもしや?)
間接キス、してしまった事に気がついてしまった。何気なく銀時に勧めてしまったが、今から考えると恥ずかしくなってくる。
「おい、どうしたんだよ?」
「え、うあぃうぇあ。何でもありんせん」
「いや、何でもなくないだろ。挙動不審になっちまってるじゃねえか」
月詠があたふたしている姿は珍しく、銀時はそれをニヤつきながら見ていた。
「月詠ちゃ〜ん、俺は何でそんなにパニクってるか見当ついちゃってんですがねぇ」
「な、パニクる?わっちが、そんなはずあるわけなかろう!」
「いやいや、明らかにパニクってるからね。いつもと全然違うもの。クールビューティーな月詠ちゃんじゃないもの」
「誰がクールビューティーじゃ!」
しばらく二人の問答が続いた。
「まあ、要するにさ」
「お、おい」
「間接キスしちゃったって意識したんだろ?」
「い、言うな〜!」
月詠が下を向いて固まってしまった。
「最初は気付かなかったけどさ、やたらにお前が固くなったの見て、ピンときたわけよ。あらあら、月詠ちゃん、けっこう乙女チックなとこあるじゃん」
「ば、馬鹿にするな!わっちが乙女じゃと、ふざけたことを」
「その反応が全てでしょーよ。間接キスに意識しちまって、挙動不審な反応ぶり。普段が普段なだけに、分かりやすい反応だわ」
完全に図星すぎるため、月詠は言葉を返すことができなかった。