書庫(記念・企画)

□夏ってのはどうしてこんな
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「わ、わりいな」

「急すぎるぞ。ボーッとして箸が止まっておると思えば、今度は急にめしをかきこんで」

「いや、汗が滴って、大丈夫かなあ、なんて」

「仕方ない、暑いのだからな。多少は覚悟の上じゃ。まあ、そんなこともあるかと飲み物を買ってるし」


月詠はペットボトルのフタを開けて、口をつける。銀時はその様子を眺めていた。月詠が飲んでいる様を見て、妙な妄想が頭をよぎる。

月詠はおそらく無自覚であろう。わかってはいるが、銀時にはそれがエロく見えてしまう。飲んでいるときの月詠の表情。汗ばんでいる月詠の体。ツンと上を向く月詠の胸。スカートの下からスラリと伸びた月詠の脚。今、月詠の存在すべてが、銀時を欲情させるに十分であった。

銀時の視線に気づいたのか、月詠はペットボトルを銀時に差し出す。


「ほれ、飲みなんし」

「え?」

「ノドが渇いておるんじゃろ?気がつかなんで、悪かった。早く、飲みなんし。ぬるくなってしまいんす」

差し出されたペットボトルを受け取ると、銀時はそれに口をつける。しばらく飲んだ後、月詠にそれを返した。


「いやあ、とりあえずは助かったぜ。ありがとな」

「こういう時じゃ。気にするでなし」


月詠はペットボトルを受け取り、口をつける。月詠は飲んだあとに、ある事に気がついた。


(ん…?これはもしや?)


間接キス、してしまった事に気がついてしまった。何気なく銀時に勧めてしまったが、今から考えると恥ずかしくなってくる。


「おい、どうしたんだよ?」

「え、うあぃうぇあ。何でもありんせん」

「いや、何でもなくないだろ。挙動不審になっちまってるじゃねえか」


月詠があたふたしている姿は珍しく、銀時はそれをニヤつきながら見ていた。


「月詠ちゃ〜ん、俺は何でそんなにパニクってるか見当ついちゃってんですがねぇ」

「な、パニクる?わっちが、そんなはずあるわけなかろう!」

「いやいや、明らかにパニクってるからね。いつもと全然違うもの。クールビューティーな月詠ちゃんじゃないもの」

「誰がクールビューティーじゃ!」


しばらく二人の問答が続いた。


「まあ、要するにさ」

「お、おい」

「間接キスしちゃったって意識したんだろ?」

「い、言うな〜!」


月詠が下を向いて固まってしまった。


「最初は気付かなかったけどさ、やたらにお前が固くなったの見て、ピンときたわけよ。あらあら、月詠ちゃん、けっこう乙女チックなとこあるじゃん」

「ば、馬鹿にするな!わっちが乙女じゃと、ふざけたことを」

「その反応が全てでしょーよ。間接キスに意識しちまって、挙動不審な反応ぶり。普段が普段なだけに、分かりやすい反応だわ」


完全に図星すぎるため、月詠は言葉を返すことができなかった。
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