書庫(長編)
□其ノ陸
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「おはようございます、銀時さん」
「おはようっす、銀さん」
「うぃ〜す」
ここは西高、坂田銀時が番を張っている高校でありんす。銀時は名目上、ここの番であるらしいんじゃが、あの男自体にはそんな意識はないらしい。
とはいえ、ひどい目にあっている西高の生徒を救ったりしており、西高の者らには頼りにされる存在であったそうじゃ。
銀時は授業に出ても、ぼんやりと外を眺めたり、眠っていたりした。決して勉強が出来るほうではなかったが、周りの者らの厚意によって及第ギリギリでテストはしのいでおったそうじゃ。
「ねえ、銀時さん」
「あ、何だよ?」
「北高のやつら、銀時さんの事バカにしてるみたいっすよ。やっちまいましょうよ」
「んなもん、言わせときゃいいじゃねえか。直接こっちに火の粉は来てねんだしよ」
「でも、銀時さんがバカにされてるんすよ。許せねえっていうか、これを機に北高とドンパチしていって」
「やりてえなら、テメエらだけでやれ。俺はごめん被るぜ。めんどくせえし、かったるいんだよ。それによ、この際だからテメエらにはっきり言っておく」
「え、何すか?」
「別にケンカするなら勝手にすりゃあいい。だがな・・・やるんなら、テメエらの名前でケンカしやがれ。俺の名前出して、ケンカするな」
「え、いや、それは」
「あんま、俺を怒らせるな。同じ高校でも、気に食わねえことするヤツには容赦しねえぞ、俺はぁ」
銀時は学校ではあまり感情を出さない男でありんした。しかし、一度怒りに火が点けば、止めることはほぼ不可能と言われておりんした。それをわかっているから、西高の者らは銀時を顔色を窺い、怒らせぬよう機嫌を取っておりんした。
「じゃ、そういうこった。俺は帰るぞ、ジャンプの発売日なんだからよ」
そう言って、立ち去る銀時に周囲の者らは何も言えなかった。銀時は自分の名前を出さねば、まともにケンカが出来ない者らに嫌悪感を感じながら、学校を後にする。
帰る道の先々では、同じ学校の者らのあいさつを受け、他校の者らからは恐れと妬みとが入り交じった表情で見られる。しかし、まともにケンカしても、銀時に勝てないことは承知していた。銀時は気にすることなく、自分の思うように歩き続けてきた。