書庫(長編)
□其ノ弐
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「銀さん、最近は偏食に磨きがかかっているね」
「もう、あそこまで行くとすごいの一言ネ。あのままだと、銀ちゃんホントにどうにかなってしまうアル。でも、私らの言う事なんかちっとも聞いてくれないし」
志村新八と神楽は『万事屋銀ちゃん』の中で話し合いを続けていた。傍目から見ても、坂田銀時の偏食はヤバイと思うほどである。しかし、銀時はそれを自覚し、開き直っているから始末が悪い。困りはてた二人はどうしたらよいのかと思案を重ねていた。
「僕たちでダメなら他の人に止めてもらえばいいんじゃない?銀さんが言う事を聞きそうな人に」
「銀ちゃん、意外に頑固アル」
「だよねえ、う〜ん、だとしたら・・・神楽ちゃん!あの人なら、銀さんだって聞いてくれるかもしれないよ」
そう言って、新八は神楽に事の詳細を話した。神楽もこれに同意した。すぐに二人は行動を開始した。
二人が行き着いたのは吉原の茶屋『ひのや』。その主人・日輪に二人は会いに来たのだった。日輪はいつものように、にこやかに茶の間に二人を通した。まずはと新八が話を切り出した。
「最近、銀さんの偏食ぶりが度を越していて、僕らが止めても言う事を聞かないんです。もうどうにも止まらないというか、何かに向かっているというか」
「変なふうに言ってんなヨ、メガネ。要はこのままだと、銀ちゃん間違いなく糖尿病になってしまうアル。天パの髪先から足の爪まで糖分で構成されてしまうネ。だからこそ、銀ちゃんを止められる人を探しているアル」
「なるほどねえ。まあ、甘味が好きだとは聞いていたし、実際に見ていたから知ってはいたけど、拍車がかかっているわけね。ふう、わかったわ。あたしは動けないし、あの子に言っておくわ。あの子にとっても、銀さんがそうなると困るだろうし」
新八らと日輪の間で話は固まったようだった。それからしばらく日が経って、いつものように銀時は冷蔵庫の中から、プリンを取り出して、これに口を付けようとした。そこへタイミングよく、ピンポーンとチャイムが鳴った。
銀時は舌打ちをしながら、玄関の戸を開けた。そこに現れたのは月詠であった。
「あれ、どうしたのよ。何かあったっけなあ。別に用事とかは」
「用事がなければ来ちゃならんのか?」
じろりと月詠は銀時を睨む。それに気圧された銀時は、うやうやしく月詠を中へ招き入れた。