書庫(長編)
□其ノ拾壱
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『a・ma・to』から宴の参加者が帰路へつく。高杉晋助の言うとおり、0時過ぎには、a・ma・toの灯は消され、辺りは闇に包まれた。
この時を待っていた、坂田銀時、鳥尾小耶太、坂本辰馬の3人は突入のタイミングを図っていた。
「あははは、何か緊張するのう」
「で、お前さんは剣の腕は立つんか?」
「ん?まあ、子供の頃からしよったき、足手まといにゃあ、ならんと思うがのう」
「坂本って言ったか。随分落ち着いてんじゃねえか。人、斬ったことあんのか?」
「ん〜、あったかのう。なかったかのう。で、おまんらは?」
坂本から問われ、銀時と小耶太は顔を見合わせたのち、声を揃えて言った。
「「ないっ!!!」」
「ほぉお、ないがか。そりゃあ、大変じゃのう」
やがて、a・ma・toの周辺を天人の衛兵が見回る。その異形と巨大さに、面々は圧倒された。
「銀時、い、意外と、デカいんじゃのう」
「んな事言ったって、斬りつけりゃあ、ヤツらだって血くらい出るだろ。最初が肝心だ。それを越えれば、どうにでもなる」
「おい、坂本は?」
小耶太の問いに、銀時は辺りを見回した。さっきまでいた坂本の姿が見えない。
「あんなあ、逃げよったかぁ」
「小耶太、あれ見ろ」
銀時らが見たのは、天人の衛兵に堂々と話す坂本の姿だった。
「あはは、ちっくと聞くがのう」
「あ?何だ、お前は。ここはお前らみたいなサルが来るとこじゃねえ。さっさと帰りやがれ」
次の瞬間、天人の衛兵の両腕が宙に舞った。天人の衛兵は、しばらくは何が起こったか分からない状態であったが、上がる血飛沫に喪失した腕の痛みに思わず大声を上げた。
「なっ、あんなあ、やりやがった」
「くっそ、遅れを取っちまった。行くぞ小耶太、宴の始まりだ」
「あいよ!」
銀時と小耶太が飛び出た頃、先ほどの声を聞いた衛兵がわらわらと集まりつつあった。
「お!遅かったのう」
「バカ野郎、こういうのは呼吸合わせてやるんだよ。何、道を聞くようなノリでやってんだよ!ああ、結構いるんだな、見張りの兵が」
「やあ、こいつは派手になりそうだねぇ。う、腕が鳴るっちゃあ」
銀時と小耶太は気付かずにいた。刀を抜く手が震えていることに。強がってはいるものの、やはり心の中では恐れや不安が渦巻いていた。
駆けつけた衛兵たちは、うずくまりながら息絶えた仲間を見て、その怒りを眼前の3人にぶつけた。
咆哮を上げながら、向かってくる天人たち。その迫力に気圧されぬよう、銀時と小耶太は気を引き締める。剣術においては非凡の才を持つ二人も、命のやり取りは初めてであった。