書庫(長編)

□其ノ拾壱
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銀時は、まず天人の斬撃を受け止める。巨体をいかした重さのある攻撃に、銀時は押され気味になる。じわじわと自分に迫る刃。気を抜けば、真っ二つにされかねないほどの状況であった。


「これから、こんなの相手にすんのか。やめりゃあ、よかったかな?」


銀時は体勢を左に移して、相手をいなした。よろめいて体勢が崩れた天人を、銀時は思いきり斬りつけた。天人は銀時をにらみ、再び銀時に襲いかかろうとする。

しかし、天人は前のめりに倒れて息絶えた。倒れた天人の向こう側に坂本の姿が見える。坂本が止めを差していたのだった。


「おい、銀時。そんなんじゃあ、力のムダづかいじゃき。それじゃあ、数人のうちに息切れするぜよ」

「へっ、ご教示どうも。相手の急所を狙って、最小限の力でか。おい、小耶太、死んでねえかあ」

「死ぬわけあるか。受け止めるの面倒じゃけえ、わしはわしでやるけえ」


小耶太は相手の一撃を避けてから、攻撃を始める。相手が攻撃した直後は、こちらが反撃する絶好の機会でもあるからだ。

小耶太は天人に一撃を加えた。しかし、息絶えぬことに違和感を感じていた。


「おかしいのう。時代劇なら、今ので死んどるはずなんじゃが」

「小耶太、後ろ後ろ」

「ほへ?」


銀時の言葉に、小耶太はひょいっと身を避けた。後ろを見せている小耶太へ攻撃しようとする者と、先ほど小耶太が斬りつけた者が、小耶太が避けたことにより、同士討ちとなってしまった。


「受け身は合わんのう。やはり、こちらから行かんにゃあ」


小耶太は素早く相手との間合いを詰めて、自分に有利な状況を作るように立ち回るようになった。

こうして、囮役の3人が大立ち回りをやってのける中、桂小太郎・高杉晋助の二人は、手薄になったa・ma・toへ易々と近付くことができた。


「うまくやってるみてえだな、あいつらは」

「そうだな。こちらの見張りの兵たちも、銀時らの方へ向かったようだし」

「あとは俺らが火を点けるだけだな。さっさとやらねえと、さすがにバレちまう」


桂と高杉は、手薄になったa・ma・to内部に油をまいた。そこに火を灯した松明を投げ入れる。


「たっぷりとまけるように奮発したんだ。派手に燃えねえと、盛り上がらねえからな。で、桂。それは何だ?」

「ふふっ、これか?これはとっておきだ。俺たちの攘夷の始まりを告げるためのな。あ、高杉、この建物で一番火の気があるのはどこだ?」


高杉は桂に怪訝な表情を見せる。しかし、問い質すのも面倒なので、言われるとおり、火の気のある場所へ案内した。


「ここだな。ここはちょうど厨房の辺りだ」


桂は、懐から取り出した火薬玉を手に取った。


「お、お前、そんなモンどっから」

「まあ、色々なトコから教えてもらってな。今回はそれの集大成だ。ふふっ、これはいつもより多めに火薬を仕込んである。爆発すれば、こんな所は粉微塵になるだろうな」
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