書庫(長編)

□其ノ参
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銀時の体内に入ったビフィズス乳酸菌は、最大の難所・死海(胃液)にたどり着いた。ビフィズス乳酸菌は死海を渡る用意をする。

一方、死海ではまたもやってきた侵入者を手ぐすね引いて待ち構えていた。やがて、モーター音が遠くから近くに聞こえてくる。

怪訝に思った胃液の精は、海面から覗き見る。運悪く、何かにぶつかり、海中へ沈んでしまった。

それはビフィズス乳酸菌の持つ、モーターボートであった。これならば、死海を泳いで体力を消耗することはない。


「んん?何かぶつかったような気がしたが・・・気のせいであったか。すぐに腸内へ向かうんじゃ!急ぐぞ」

「な、何て反則モン持って来てんだよ。これじゃあ、みんな通してしまうじゃん。そんなに簡単に行かせるかっての」


妙なプライドを持って、胃液の精はビフィズス乳酸菌のモーターボートを止めに入る。

しがみついて止めたり、その身を犠牲にしてスクリューにあえて巻き込まれたりと、あの手この手を駆使して妨害活動を行った。

ビフィズス乳酸菌は、しがみついてくる胃液の精に対し、苦無を投げて対抗する。苦無を受けて海中に沈みはするが、数が多いゆえに、全てを追い払うには至らなかった。

胃液の精の妨害によって、死海に溶け込むビフィズス乳酸菌もいたが、ほとんどが生き残っていた。死海を乗り越えたビフィズス乳酸菌は、その後の難関も突破して腸内に行き着いた。

普通の乳酸菌よりも、生き抜く力が格段に高くなっているため、数も力もあまり失われることなく腸内で活動できるのである。


「といったところか。わっちらは、この中で生きていくために厳しい修行を積んできた。ぬしらの力になるためにな」

「まあ、そりゃあ嬉しい話だけどさあ。乳酸菌って事は、俺らと結びつくわけだよな?俺らと結びついてという事は、どういうように結びつくかは知ってるよな?」


善玉菌が問いかけると、ビフィズス乳酸菌は急に顔を赤らめた。視線があちらこちらに動き、明らかに態度がおかしくなっている。

それを見た善玉菌はニヤリと口角を上げて、言葉を重ねる。


「おやおやぁ、まさか知らねえわけはねえだろ。結びつき方のイロハくらい」

「当たり前じゃ!そ、それくらい、知っておりんす」

「ほほう、じゃあ、お聞きしますか。では、どうやって、善玉菌とビフィズス乳酸菌は結びつくんですか?」

「ぬ、ぬしと、わっちが、そのぉ、睦み合ってじゃなあ。そして、新しき善玉菌を生み出して・・・」

「ええと、すんませ〜ん。睦み合うってどういう事ですかあ?どう睦み合うのか、具体的に言ってもらわないと分からないです」

「や、それはぁ、何と言うか体と体を抱き合わせてじゃな・・・そし、てぇ」


ビフィズス乳酸菌は、顔がこれ以上ないくらいに赤くなってしまった。しどろもどろになっているビフィズス乳酸菌を見て、善玉菌は声を上げて笑った。


「悪い悪い、ここ最近、こうして大笑いした事なくてよ。それだけでも、お前らが来てくれて良かった。まあ、新たな善玉菌に関しては、やつらとの戦いが済んでからだ」

「ふふ、そうじゃな。まずはあの悪玉菌との戦いがあるからの。わっちらも全力を持って、相手に対する。必ず勝たねばならぬ。そのためにわっちらは来たのじゃからな」

「ああ、勝とうぜ。今まで分が悪すぎたからな。今度は勝てる、お前らがいるなら絶対にな」


善玉菌とビフィズス菌は、固く勝利を誓い合った。次の戦いに勝たないことには先の未来など望むべくもない。次の戦いは有無の一戦、雌雄を決する戦いになる。善玉菌、ビフィズス乳酸菌、悪玉菌、三者による決戦の時まであとわずか・・・。


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