書庫(長編)
□其ノ漆
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「銀時、ぬしがなぜ・・・?」
「え、月、詠?何でおめえが」
「それはわっちの言う言葉じゃ。どうして、ぬしがわっちの家でくつろいでおるんじゃ?」
「月詠、あんた知ってんのかい?銀さんのこと」
「ま、まあ、ちょっとした知り合いでありんす」
「月詠姐、銀さんはねオイラを助けてくれたんだよ。そのお礼に来てもらってたんだ」
月詠は事情を理解した。銀時の方に向かって、月詠は軽く頭を下げた。
「この度は、晴太を助けてくれて礼を言う。ありがとう」
「そんな大したことはしちゃいねえよ。ただ、通りがかりに出くわしただけだって」
「銀さんって、すごいんだよ。ガラの悪いヤンキーを一睨みして、追い払ったんだからね。ちょっとカッコいいって思ったよ」
「そうじゃねえだろ。穏便に帰ってくださいよって、アイコンタクトしただけよ?銀さん、平和主義者だから」
「あらあら、銀さんって強いんだね。こんな見事な天パなのに」
「日輪さん、天パ関係ないから。強さと天パはまったく関連性はないからね」
見事なまでに馴染んでいる。日輪がにこやかに銀時と話しているのを見て、わっちは微笑ましくこの光景を眺めていた。日輪は人を見る目が確かであった。じゃから、にこやかに話していても、どこかで相手の器量を測っておる。これも色街で暮らしてきた女の性とでも言うのじゃろうが。
しかし、このときの日輪の表情は本当に楽しんでいる様子であった。相手を計ることもなく、ただ銀時との会話を楽しんでいる風じゃった。
「ほら、月詠。そんなとこに突っ立ってないで、早く座りな」
「う、うむ」
日輪に促され、わっちは座った。なぜか銀時の隣に。
「銀さんはどこの高校?」
「え、西高っすけど」
「西高ねえ。けっこうガラの悪いとこって聞いてるけど」
「いやいや、西高はガラ悪いけども、俺は全然悪くないですよ。ねえ、月詠サン?」
「んあ?ああ、そうじゃな。銀時はそんなには悪くはありんせん」
「ふ〜ん、そんなフォローするんなら、二人は彼氏彼女の仲かしらね〜?」
そう言って、日輪は悪戯っぽく笑った。わっちと銀時は必死にこれを否定した。日輪は、わっちらが必死に関係を否定する様を、面白そうに見つめておった。