書庫(長編)

□其ノ拾伍
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空中に止まったまま戦い続けた二人は間をとるため、広場近くの木へと移動した。

また、その木から飛び出して戦い続ける。


「てめえ、いい加減にくたばりやがれ!」

「はん!そんな腕なら、くたばってやれねえんだよ。この腐れボンクラが」

「なら、こいつはどげなだ?」


月詠が後ろからの声を聞いたとき、彼女の遥か上から小耶太が降りてきた。

小耶太は手を合わせてハンマーを振り下ろすように、月詠の後頭部に打ち下ろした。

月詠は地上に打ち付けられるところだったが、体勢を整えて難を逃れた。


銀時と小耶太は、矢のように月詠に向かっていく。迎え撃つ月詠も無策ではない。地面の土を掴むと、それを二人に投げつけた。

二人が目眩状態になったところを、月詠は見逃さなかった。銀時の延髄に跳び蹴りを、小耶太には回転してからの肘打ちを左側頭部を見舞う。


「このっ、散々やってくれんじゃねえか!俺、いいトコねえし、やられっぱなしにおけるかよ」

「小耶太に隊長任せた方がいんじゃなぁい♪なら、私も喜んでついて、くっ」


銀時は体勢を低くして、回転しての足払いを仕掛けた。もんどりうって倒れた月詠の両足を掴んで、銀時はブンブンと回転を始めた。空気を読んだ隊士らが、回転数を大声で叫ぶ。


二十回ほど回したあと、銀時は上空高く投げ飛ばした。


銀時は回転したことによる目眩を回復させ、上空へ飛んだ。


「ここで白黒つける!」

「なら、てめえが黒だろが、あん!」


空中で殴り合い、蹴り合い凄まじい戦いが続く。長く続くかと思われたが、やはり二対一の状況は月詠には分が悪かった。

手練れの二人相手に、月詠も徐々に押されつつあった。戦っては木へと逃れ、呼吸を整えてはまた戦う。しかし、その間隔がだんだんと短くなっていた。

銀時と小耶太も月詠と向かい合わせの木の上で、相手の様子を窺っていた。


「これで終いじゃろ。わしらがだいぶ押し始めちょる」

「つってもなあ・・・。何ていうか」

「さっさと終わらせんと。酒がどんどん不味くなる。あともう少しなんじゃけえ、四の五の言うんじゃねえ」


呼吸を整え、月詠が木の上から飛び出した。これに合わせて、銀時と小耶太も飛び出す。バシバシとやり合う音がこだまする。正面から打ち合う銀時と月詠。

やはり、銀時が押し始めている。月詠も銀時にかかりきりで、小耶太にまで気が回らなかった。


「終いじゃあぁぁぁ!!!」

「小耶太ぁ、殺るときにはなあ・・・声も発せず殺すんだろうが!!!」


月詠は自ら後方へ回転し、オーバーヘッドキックの要領で、小耶太の脳天を蹴りつけた。バランスを崩した小耶太は、力なく地上へと落ちていく。


「確かにな、お前の言うとおりだわ。ただ、俺からも一言。んな大技の後には、必ず隙が出来んだよ、コノヤロー!!!」


銀時は月詠の腹部に、深々と両足で思い切り踏みつけた。渾身の力で踏みつけられた月詠は、急速に落下していった。

月詠は体勢を整え、受け身を取ろうとする。しかし、月詠の落下地点にはあの男が待っていた。


「いらっしゃぁぁぁい」

「く、てめ、えぇ」

「まぁぃぃぃぃんんんっっっ!!!」


小耶太は月詠に渾身の力を込めた打ち下ろしを叩きつけた。地面に激しく打ち付けられた音、この衝撃の大きさに隊士の誰もが思った。これで決着が着いたと。


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