書庫(長編)

□其ノ壱
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男たちはわっちらに向かって殺到した。わっちは群がる男たちを次々となぎ倒していった。

少数とはいえ、百華は精鋭揃い。負ける事は露ほどにも考えなかった。しかし、倒しても倒しても、敵はどんどんかかってくる。


「どうした?こんなもんか、張り合いがないわ。ほれ、もっとかかってきなんし!」

「噂どおり、いや噂以上じゃねえか。“紫紺の死神太夫”の名はダテじゃねえって事かよ」

「舐められてんじゃねえ、相手は女だぞ。それに俺らは数で勝ってんだ。びびんじゃねえ」

「数だ、男だと言ってはおるが、不甲斐ないザマばかり晒しておるの。そんなものでは、わっちらは屈さぬ」

「総長、里紅が手傷を負ってしまって」

「里紅を後方へ。手当てをしてやれ。残っておる者は聞け!一人十殺じゃ。十殺に満たずして、倒れてはならん。気を張れ!ぬしらならやれるぞ。華麟、ぬしは旗持ちじゃろう。しっかと百華の旗を高く掲げよ。旗は決して奪われるな」


旗持ちの華麟が、百華の旗を高く掲げる。風にはためく、わっちらの旗が仲間たちに勇気を与える。

残った仲間の士気を鼓舞したものの、疲れの色は隠せなかった。その時、後ろから悲鳴のような声が聞こえた。それは時を追うごとに、あちこちから聞こえてきた。
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